『図説 世界の地域問題100』漆原和子、藤塚吉浩、松山洋、大西宏治編(ナカニシヤ出版)

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図説 世界の地域問題 100

『図説 世界の地域問題 100』

著者
漆原 和子 [編集]/藤塚 吉浩 [編集]/松山 洋 [編集]/大西 宏治 [編集]
出版社
ナカニシヤ出版
ジャンル
歴史・地理/地理
ISBN
9784779516139
発売日
2022/01/25
価格
2,970円(税込)

書籍情報:openBD

『図説 世界の地域問題100』漆原和子、藤塚吉浩、松山洋、大西宏治編(ナカニシヤ出版)

[レビュアー] 佐藤義雄(住友生命保険特別顧問)

温暖化、難民…迫る危機

 ペルーの世界遺産マチュピチュでのロープウェー建設計画を巡る論争や、地球温暖化による海面上昇を一因とする太平洋の環礁国ツバルの国土沈没の危険など、国内外で浮上する自然現象と人間活動が絡み合った100の「地域問題」を豊富な地図・図表や写真と共に紹介するユニークな一冊。2007年版の全面改訂であるが、その背景には気候変動や生態系の変化の影響の深刻化、難民の大量発生、そして一地域の問題のグローバル・サプライチェーンへの波及など、国境を越えた問題が加速度的に切迫感を増していることがある。直近の地域問題に迫るため、編者である4名の地理学者だけでなく、地球科学や社会学、都市計画、動物生態学など各分野の専門家約60名の協力を得て刊行された。

 高等学校において22年度から「地理総合」が必修となり「社会的事象の地理的な見方・考え方」の重要性が着目される中、地理を学ぶ学生と教師にとって、本書は世界の諸課題への入口として格好の教材となろう。また、地域問題に向き合う自治体の関係者や一般の市民にも興味を持ってもらえるよう、項目選定と内容に工夫がされており、日常あまり触れる機会がない世界や日本の様々な地域問題を知るためのガイドブックともなる一冊である。

 特に興味深かったのは、「『地図にない場所』をなくすには」という項目。大手のプラットフォーマーのウェブ地図に詳細な情報が載っている地域は実は先進国のごく一部に限られ、そうでない地域の地図を作るため、誰もが自由に編集できるクラウドソース型地図の作成に多くの人々が参加している。その一環である「クライシスマッピング」では、災害や疾病の被害状況の迅速な把握・共有が支援活動に結びついている。ITがそれを可能にしたともいえるが、地域に貢献しようという人々の使命感に心を打たれた。このような活動はもっと知られるべきであり、本書の意義はそこにもあると思う。

読売新聞
2022年4月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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