『東北新幹線沿線の不思議と謎』
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<東北の本棚>ささやかな旅気分 堪能
[レビュアー] 河北新報
1982年6月開業の東北新幹線は今年で40周年を迎える。当初は大宮-盛岡間で運行し、85年に上野駅、91年に東京駅への乗り入れが実現した。
着工された70年代初頭の日本は高度経済成長のさなか。大盤振る舞いのムードだった。その後、オイルショックやバブル崩壊の影響で構想は曲折をたどる。全区間の東京-新青森間が結ばれたのは、開業28年後の2010年だ。
盛岡と青森の間は、八戸経由の東回り、大館、弘前経由の西回りとの間で、ルートを巡る激しい綱引きが繰り広げられたという。
当時の田中角栄首相が調停に乗り出し、東回りで決着した経緯は時代の空気を感じさせる。田中氏が西回り支持派を納得させた条件の一つが「羽越新幹線の同時着工」。羽越新幹線は今なお基本計画路線にとどまる。
高速性と大量輸送が主眼だった新幹線は、快適性の面でも進境著しい。車窓風景と日差しで決める座席選び、車両の種類で異なるコンセントの位置といった実用的なアドバイスがうれしい。
簡潔な構成で、どのページから読んでもいい。新型コロナウイルス下、思うように出掛けられない中、収束後の目的地を探しながら、ささやかな旅気分が楽しめる。(志)
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実業之日本社03(6809)0495=1100円。