『将棋記者が迫る 棋士の勝負哲学』村瀬信也著(幻冬舎)

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将棋記者が迫る 棋士の勝負哲学

『将棋記者が迫る 棋士の勝負哲学』

著者
村瀬信也 [著]
出版社
幻冬舎
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784344790643
発売日
2022/01/26
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

『将棋記者が迫る 棋士の勝負哲学』村瀬信也著(幻冬舎)

[レビュアー] 中島隆博(哲学者・東京大教授)

 言語脳科学の酒井邦嘉先生に「藤井聡太さんは将棋と日本語のバイリンガルだ」とうかがったことがある。日本語の話者が言い間違えた時にすぐわかるように、藤井さんは指した一手が適切かどうかが瞬時にわかるのだろう。この本に挙げられた21名の棋士たちは誰もがその域でしのぎを削っているのだ。

 以前の将棋と決定的に違うのは、AIの導入である。藤井さんはそれによって「明快な結論が出にくい序中盤の感覚や大局観が磨かれたという」。その上で、「AIの指し手を鵜呑(うの)みにしない」で、自分の頭で考え抜くそうである。その異次元の能力は佐藤天彦(あまひこ)さんに「将棋の真理を探究するというアプローチでは、上回るのが難しい気もする」と言わしめるほどであった。

 AI導入で棋士の消耗はどれほどかと思う。渡辺明さんは「今後、棋士の選手寿命は短くなるのかもしれません」と語っている。そうであれば、50代の棋士が好成績を残すのはよほど難しいことだろう。それでも羽生善治さんのタイトル獲得100期は是非見てみたいと思う。棋士の肉声からその苦悩に迫った好著である。

読売新聞
2022年4月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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