『加藤茶・綾菜の夫婦日記『加トちゃんといっしょ』』
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ちょっとだけよと言わないで 45歳差の10年物語
[レビュアー] 今井舞(コラムニスト)
加藤茶との結婚当初、45歳の「歳の差婚」が話題となった著者。彼との出会いから、結婚10周年を迎えた現在までを綴った本書は、手書きのマンガを使ったコミックエッセイの形が取られている。
しかし、著者は特に絵心があるわけでもなく、マンガに挑戦するのは本書が初めてだそうで。確かに、一見して画力は小学生レベル。見開き右ページに4~8コママンガ、左ページにそのマンガのエピソードの補足文、というスタイルで、マンガの役割は挿絵程度。自身を三つ編みおさげの女のコ、加藤はトレードマークの一本毛の禿げヅラ姿のコロンとしたキャラクターで描き、背景もほとんどナシ。だが、その子供っぽい絵柄のお陰で、ほのぼのとした読後感への着地に成功している。
バイトしていた寿司屋に来た加藤との出会いと、超アナログなアプローチ。小野ヤスシと左とん平が必ず付いて来る三者面談のようなデート。有名芸能人である加藤の異次元の日常に面食らった交際時。結婚後は、偏食で潔癖症で昼夜逆転生活を送る夫との慣れないドタバタ生活。著者のセリフが故郷の広島弁になるのも、ほのぼの感の構築に一役買っている。
結婚当初、「嫁は遺産狙い」「後妻業」と、罵詈雑言の嵐に見舞われた加藤夫妻。揚げ物の献立写真をSNSに上げただけで「高齢の夫を殺す気か」と騒がれるなど、特に一般人であった著者が受けたダメージは大きかったという。本書では、このバッシング騒動も含め、加藤の大病や、子供を諦めたエピソードなど、45歳差婚ならではのダウナーな話題にも触れている。だが、マンガのお陰で重々しさは皆無。ニコニコ顔の二人の絵に「いつまでも仲良く、たくさんの思い出を作っていこうね!」で大団円。
老いて嫁に捨てられた市村正親や、金どころか命まで失ってしまった紀州のドン・ファンなど、暗いイメージが纏わりがちな「歳の差婚」の行く末に光明を灯したともいえる本書。この上梓で、夫妻の「芸能界のおしどり夫婦」の椅子は、ますます堅牢になっていくことだろう。死が二人を分かつまで。