従来、「尊王攘夷派」VS「公武合体派」という構図で捉えられてきた幕末史。だが当時の日本人はみな尊王であり、勝海舟や坂本龍馬ら開明的とみられる人物も含めて攘夷という点でも一致していた。
真の対立軸は、それをすぐに決行すべきだとする立場(小攘夷)と、国力を蓄えた未来に実行に移すべきだとする立場(大攘夷)の差にある。この違いが朝廷と幕府がそれぞれ出す命令の齟齬(そご)につながり、血で血を洗う政争と時代の転換を生んでいく。
12年前に刊行され、幕末史認識に一石を投じた歴史書の増補改訂版だ。(町田明広著、講談社学術文庫・1012円)
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2022年4月24日 掲載
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