『ザ・コーポレーション The Corporation キューバ・マフィア全史 上・下』T・J・イングリッシュ著(早川書房)

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ザ・コーポレーション キューバ・マフィア全史 上

『ザ・コーポレーション キューバ・マフィア全史 上』

著者
T・J・イングリッシュ [著]/峯村 利哉 [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784152100863
発売日
2022/02/16
価格
3,300円(税込)

書籍情報:openBD

ザ・コーポレーション キューバ・マフィア全史 下

『ザ・コーポレーション キューバ・マフィア全史 下』

著者
T・J・イングリッシュ [著]/峯村 利哉 [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784152100870
発売日
2022/02/16
価格
3,300円(税込)

書籍情報:openBD

『ザ・コーポレーション The Corporation キューバ・マフィア全史 上・下』T・J・イングリッシュ著(早川書房)

[レビュアー] 小川哲(作家)

米巨大裏組織の興亡

 一説によると、ヤクザの語源は花札の八九三という目にあるという。ヤクザに限らず、多くの反社会勢力が賭博と密接に関わっている。アメリカにおいてキューバ・マフィアが拡大したのは、ボリータと呼ばれる数当て賭博のおかげだ。カストロによって革命が起こり、多数のキューバ人がアメリカへ亡命した。ボリータは亡命キューバ人の間で流行し、キューバ・マフィアに巨万の富をもたらした。

 本書の主人公はホセ・ミゲル・バトルだ。革命前のキューバでは汚職警官で、賭博の胴元から賄賂を受け取っていた。革命によってカジノが閉鎖され、賄賂をもらえなくなった。こうしてバトルはアメリカへ亡命し、CIAの後ろ盾で反カストロ運動に参加し、ピッグス湾侵攻で英雄となる。アメリカに戻ってきたバトルはボリータのビジネスを始める。ピッグス湾での活躍により評判の良かったバトルの組織「ザ・コーポレーション」は急速に拡大し、アメリカに巨大な犯罪帝国を築いていく。

 敵対組織との抗争で活躍するのは、かつてバトルとともに反カストロ運動をしていた仲間たちだ。彼らはキューバの共産主義政府を打倒するため、CIAから軍事教練を受けていた。アメリカ人から教わった戦闘技術を使い、アメリカ国内で暴れまわる。CIAの秘密工作員が「ザ・コーポレーション」の殺し屋に転じる。

 本書はバトルという警官がアメリカへ亡命し、「ザ・コーポレーション」という巨大な反社会的組織を作りあげ、その組織が壊滅していくまでの話だ。キューバ・マフィアが誕生した原因の一端がアメリカにあるだけではない。ケネディ暗殺からウォーターゲート事件まで、アメリカという国家が生みだした負の遺産を利用して、組織は拡大していく。本書は「ザ・コーポレーション」というマフィアの興亡を描くことで冷戦の本質を浮き彫りにする、スリリングなノンフィクションである。峯村利哉訳。

読売新聞
2022年4月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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