『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』柳川範之、為末大著(日経BP)
[レビュアー] 鵜飼哲夫(読売新聞編集委員)
男子400メートルハードルの日本記録を持つ為末大さんは現役時代、自分が後ろを向いている間に仲間にハードルの間隔をずらしてもらい、パッと振り向いてから跳ぶ練習をした。「体調によって選手は歩幅が変わるけれど、この練習をすれば、どんな体調でも安定して跳べる」。かつて取材にそう語り、説得力があった。
人は過去の成功体験にこだわり、身につけた経験やスキルに頼って生きようとするが、それでは変化する自分の身体、激動する世界に対応できない。「アンラーン」とは、この練習法のように、新たな挑戦ができる、伸びしろの大きな身体と思考を育む、学びの方法だ。
「うちの会社では……」、「以前はこうだった」と前例で説明するクセのある人に本書はおすすめ。独学で大学入学資格検定試験に合格し、東大経済学部教授となった柳川範之さんと為末さんが、「ついてしまった悪いクセを直す」アンラーンの極意を語る。
このうち、「自分の仕事を専門用語抜きで説明する」というのは、意外に難しい。わかっているようでわかっていない自分の可能性を見直す、名コーチの手引書だ。