『迫害された移民の経済史』玉木俊明著(河出書房新社)

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迫害された移民の経済史

『迫害された移民の経済史』

出版社
河出書房新社
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784309228433
発売日
2022/03/01

書籍情報:openBD

『迫害された移民の経済史』玉木俊明著(河出書房新社)

[レビュアー] 佐藤義雄(住友生命保険特別顧問)

 本書は「ディアスポラ」、すなわち「宗教的迫害のために集団で他地域に移住することを余儀なくされ」た人々が、特に16~18世紀のヨーロッパの繁栄に果たした役割をテーマとした一冊である。彼らはヨーロッパ域内のみならずアジアやアメリカへの対外進出でも大きな貢献をした。その代表例はユダヤ人であるが本書ではユグノー(フランスの新教徒)やアルメニア人も大きく取り上げている。

 なぜ迫害された民であるディアスポラが重要な働きを果たしたのか。それは高い技術を新しい居住地に伝播(でんぱ)させ、また故郷とのネットワークを利用しつつ、国際貿易商人としてヨーロッパと世界各地を商業や金融で繋(つな)ぐ主体となったからであり、本書では様々な事例が解説される。

 重商主義時代のヨーロッパの覇権は軍事的優位に負うところが大であるのは言うまでもないが、商業システムにおける優位性も見逃してはならない、そしてその優位性を支えたディアスポラの存在にも光を当てるべきと著者は述べる。彼らは抑圧されながらも、したたかに逞(たくま)しく生きた歴史の影の主役なのである。

読売新聞
2022年5月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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