『いい日だった、と眠れるように 私のための私のごはん』今井真実著(左右社)
[レビュアー] 南沢奈央(女優)
料理家の著者による、旬の食材を使ったレシピと季節ごとの食をめぐるエッセイ。文章はあたたかく、写真は美しい。それでいて、どちらもシンプルなのがミソ。レシピも至ってシンプルなのだ。
「もっとおいしく」よりも「これなら作れる」というレシピの軽やかさを大切にしているそう。たしかにどれも、近所のスーパーで手に入る食材や家にあるような調味料で出来る。だけどなんだか、特別感のある料理ばかり。鯛(たい)と生ハムちらし、ナンプラーバター枝豆、舞茸(まいたけ)カレーせんべい、長芋のねぎ炒(いた)め……。コラボレーションの妙に唸(うな)る。柿モッツァレラ春菊なんぞ、料理も柿も苦手な私だが、作りたいと心が躍っている不思議。
日常の中で食卓も心も豊かになるヒントが詰まっている一冊だ。料理を通して、季節を楽しむこと。そんな身近にある大切なことにふと気づき、感謝したくなった母の日。