自己解決力アップ。あらゆる問題解決に役立つ「因数分解思考」とは?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
「自分の悩みを解決したい」と思っている人は、決して少なくないでしょう。
けれど、そもそも多くの人は、その悩みの解決方法がわからないことに悩んでいるもの。つまり「悩みがあることに悩んでいる」のではなく、「悩みの解決方法がわからないから悩んでいる」ということ。
国内で唯一のビジネス数学教育家である『あらゆる悩みを自分で解決! 因数分解思考』(深沢真太郎 著、あさ出版)の著者は、そう指摘しています。数学的思考ができる人材を育成する「ビジネス数学」を提唱し、ビジネスパーソンの育成に従事している人物。
そんな著者は、本書のテーマとして「因数分解」を挙げています。かつて中学校で学んだ因数分解が、大人になった私たちの悩みを解決するために役立つというのです。
たとえば、「売上」という数はどんな要素で成り立っているでしょうか?
「単価」100円(税込み)のお菓子が3個売れれば、300円の売上となります。
つまり、「売上」は「単価」という数が「販売数」だけ積み重なっていると考えれば、次のような分解ができるはずです。
売上=単価×販売数(「はじめに」より)
このように、物事は「質」と「量」に分解できるということ。同じように「上司とうまくコミュニケーションがとれない」のなら、「コミュニケーションは、相手と話す内容や時間によって深くなる」と考えることが可能です。
つまり、
コミュニケーション=質×量
という図式が成り立つので、上司と話す内容の“質”を上げ、話す時間という“量”を増やせば、いいコミュニケーションがとれるようになるという発想です。たしかにそう考えれば、著者のいう「因数分解思考」はあらゆるケースにあてはめることができそうです。
きょうは第2章「因数分解思考とは何か」に焦点を当て、基本的な考え方を確認してみることにしましょう。
因数分解思考とは、なにをすることか
因数分解と聞くと、(とくに数学が苦手な方は)それだけで抵抗を感じてしまうかもしれません。
しかし上記にもあるように、因数分解は問題や悩みを解決する際に役立つ方法。それは、「メカニズムを明らかにする手法」といいかえることもできるのだといいます。
そして、ここで引き合いに出されているのが「素因数分解」。すなわち、ある自然数を素数のかけ算[×]に分解することです。自然数とは、数学用語では正の整数を意味するのだとか。
素数は2以上の自然数で、正の約数が1と自分自身のみであるもののこと。わかりにくいかもしれないので、具体的な数で考えてみましょう。
6=2×3
56=2×2×2×7
2と3と7は、それ以上小さくできない数=素数(68ページより)
つまり素因数分解とは、かけ算[×]を使って「これ以上小さくできない状態」にすること。
では、そんな素因数分解とは、どんな行為をしていることなのでしょうか? この問いについては、6=2×3という数式を文章で表現することによって解説がなされています。
6=2×3
↓文章化
6という数は2と3をかけ算することでできる
56=2×2×2×7
↓文章化
56という数は2と2と2と7をかけ算することでできる(69ページより)
これは、6や56という数のメカニズム。6や56がなんの数字でできているか、そんな関係で構成されているかを明らかにすることであるわけです。
そして、こうした“なにでできているかを明らかにする”ための頭の使い方が“因数分解思考”だということ。(66ページより)
「要素」と「関連づけ」
重要なポイントは、この因数分解思考が会社の売上についてもあてはまることです。
(会社の売上)は(商品)と(お客様)でできている
↓
(会社の売上)=(商品の価格)×(お客様の数)
(72ページより)
なお、この結論が出るまでには2つの行為があるようです。まず1つ目は、売上を構成する要素を明らかにしたこと。つまり、それが“商品”と“お客様”です。2つ目は、“商品”と“お客様”がどんな関係になっているかを明らかにしたこと。
(商品の価格)×(お客様の数)がそれにあたり、この2つ目の行為を“関連づけ”と呼ぶわけです。すなわち、(商品の価格)と(お客様の数)という2つの要素をかけ算[×]で関連づけるということ。まとめると、
因数分解思考とは何をすること?
STEP1 構成する要素を明らかにする
STEP2 要素を関連づける
(73ページより)
あくまで基本中の基本ということではありますが、これこそが因数分解思考の根幹をなす考え方だということ。この点を踏まえておけば、本書の以後の展開も無理なく理解できるはずです。(71ページより)
*
本書の特徴は、化粧品メーカーに勤務する28歳女性と、コンサルティング会社に勤務する31歳の兄、そして人間に悩みの解決方法を指導しているオスのパンダとの会話による物語仕立てになっていること。
そのため気負うことなく、「因数分解思考」を理解することができるわけです。さまざまな悩みを解決するために、読んでみてはいかがでしょうか?
Source: あさ出版