払った「消費税」10%はどこへいく? 覚えておきたい損しない税金のしくみ

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

払った「消費税」10%はどこへいく? 覚えておきたい損しない税金のしくみ

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

日々の生活から人生の大きな節目にいたるまで、私たちの生活に密着しているのが税金です。けれど、わからないことも決して少なくはなく、それどころか「勝手にとられるものなんだから、どうしようもない」という気持ちをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし税金は「とられるもの」ではなく、納税は国民の義務。だからこそ、税金の基本を知っておくことが大切ーー。

そう主張しているのは『これだけは知っておきたい「税金」のしくみとルール改訂新版8版』(梅田泰宏 著、フォレスト出版)の著者。企業における幅広いコンサルティング活動を精力的に行っている公認会計士、税理士です。

私たちの生活にはいたるところで税金がかかっています。

たとえば株や投資信託、不動産の購入などにも税金はかかります。これらは税金が「景気の調整」や「政策の手段」という役割を担っているからなのです。

これらの税金を操作することで、景気を抑制・刺激したり、政策に沿うよう私たちの行動をコントロールしているんですね。

つまり、わたしたちを取り巻く「経済」と税金は深く関わっているのです。

そう考えると、「税金を知ることは世の中の流れを知ること」、といっても過言ではないでしょう。さらに、払った税金がどう利用されているか、は常に考えていくべきです。(「はじめに」より)

そこで本書において著者は、「知っておきたい税金の基礎知識」をまとめているわけです。税金の知識を学ぶことは難しそうにも思えますが、解説は平易で図表も豊富なので、頭に入れておくべきことを一度読んだだけでスッキリと吸収できるはず。

また、ビジネスのみならず、プライベートなどあらゆる場面で遭遇する税金について、シーン別に解説されているのもうれしいところです。そんな本書の第5章「まだまだある! 仕事と生活に関わる税金 消費税、そのほかの税金」のなかから、きょうは「消費税」についての基本を改めて確認してみたいと思います。

いちばん身近な税金、消費税とは?

私たちがもっとも頻繁に払っている税金は、やはり「消費税」だということになるでしょう。

とはいえ消費税法が施行されたのは平成元年なので、比較的新しい税金でもあります。そればかりか世界史的にみても歴史は浅く、登場したのは近代になってからなのだとか。

消費税は文字どおり、「消費」に対してかけられる税金。したがって法人税や所得税にくらべて景気に左右されず、税収が安定しているという特徴があります。そのため、消費税のような「付加価値税(売上から商品・材料の仕入額を差し引いた金額である「付加価値」に課税するもの)」を税金の中心に置くことが世界的な流れになっているわけです。

なお消費税(国分)の収入については、従来から福祉予算に充てるものとされていましたが、平成26年の8%への税率引上げに際し、年金・医療・介護の社会保障給付と少子化に対処するための経費(社会保障4経費)に充てることが消費税法に明記されたそう。

なお、増え続ける社会保障費をまかなうため、令和元年10月1日からはさらに10%引き上げられました。しかし、はたしてそれで税率アップに歯止めがかかるのか、予断を許さないところではあります。(186ページより)

消費税は、どんなしくみで集められるのか?

ご存知のとおり私たちは、モノやサービスを消費するたびに消費税を支払っています。けれども自分で商売をしている人を除けば、消費税を直接「納税」してはいません。あくまでも納税しているのは、私たちがモノやサービスを買った事業者。

たとえば100円ショップで100円商品を購入した場合、私たちは110円を支払うことになります(飲食料品以外の場合)。このうちの10円を、お店などが税務署に納めるということ。つまりお店は消費税を預かるだけで、自分では負担していないわけです。

このように、税を負担する人(担税者)と、税を納める人(納税者)が異なるのが「間接税」です。消費税は、代表的な間接税なのです。(188ページより)

ところで100円ショップは私たちから10円を預かって納税するわけですが、工場などから仕入れる際には自らも消費税を支払っているはず。そのぶんの消費税は工場などが納付するので、そのままだと二重に支払っていることになってしまいます。

その工場なども原材料を仕入れる際に消費税を払うのですから、四重五重の課税になっているのかという疑問が湧いてきても不思議ではないでしょう。しかし、そうならないよう、事業者が収める消費税を計算する際には、仕入れるときに支払った消費税を差し引くしくみになっているのだそうです。

正確にいうと、消費税の課税売上にかかる消費税額から、課税仕入にかかる消費税額を控除して、納税額を計算しているということです。

この控除のことを「仕入税額控除」といいます。(190ページより)

仕入税額控除があるため、長い流通課程があったとしても消費税の総額は10%に収まり、それを最終的な消費者が負担することになるのです。(188ページより)

10%のうち2.2%は「地方消費税」

ひと口に消費税といっても、実は10%のうち国税は7.8%で、残り2.2%は「地方消費税」(都道府県税)。飲食料品などの8%では6.24%が国税、1.76%が地方消費税になり、併せて10%、8%になっているというのです。

とはいっても、消費税を納税する事業者が、国の消費税と地方消費税を分けて申告・納付する必要はなし。事業者の事務負担を軽くするため、地方消費税も国の消費税と合わせて税務署に申告・納付することになっているからです。

そして税務署に納められた地方消費税は、後日、国から都道府県に払い込まれるわけです。(190ページより)

税金の知識は、仕事や生活に不可欠なもの。どんな税金があって、どこにどうやって収めるのか、今後税制はどう変わっていくのかなどを知っておけば、損をせずに済むわけです。そういう意味で、本書を読んでおくことには大きな意味があるといえるでしょう。

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2022年5月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク