これからの営業に必須となる「言語力(コンテンツ力)」の価値と鍛え方

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新時代の営業「変わること」「変わらないこと」を1冊にまとめてみた

『新時代の営業「変わること」「変わらないこと」を1冊にまとめてみた』

著者
横山 信弘 [著]
出版社
フォレスト出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784866801766
発売日
2022/04/12
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

これからの営業に必須となる「言語力(コンテンツ力)」の価値と鍛え方

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ひと口に営業と言っても、その形態は多岐にわたります。しかも時代とともに、営業という言葉は多義的になっています。マーケティング部門、事業開発部門都の垣根もなくなりつつあります。

ですから、ひと口に営業の「変わること/変わらないこと」と言っても、どの切り口で語ったらいいか、悩むのです。(「はじめにーー新時代の営業において『変わること/変わらないこと』とは?」より)

コンサルタントである『新時代の営業「変わること」「変わらないこと」を1冊にまとめてみた』(横山信弘 著、フォレスト出版)の著者はこう記しています。

そして「自分ひとりでは手に負えないテーマだ」と考えた結果、行き着いたのは「営業の第一人者」18名に声をかけ、インタビューを試みようという考え。つまり、その内容をまとめたものが本書なのです。

人気営業本の著者、SNSを駆使して営業ノウハウを発信するインフルエンサー、営業のオンラインイベントで人気のプロデューサーなど、著者がインタビューした「営業の第一人者」たちは多種多様。

しかも本書が特徴的なのは、新時代の営業において「変わること/変わらないこと」をランキング形式で紹介している点です。

根底にあるのは、「せっかく多くに知見が集まったのだから、多くの読者に届けたい」という思い。そこで、たくさんの人に興味を持ってもらえるようにランキング形式にしたというのです。

そんな本書のなかから、きょうは第2章「言語力(コンテンツ力)」に焦点を当ててみたいと思います。

「暗黙のルール」が伝わりづらい時代

これまで営業は、「非言語コミュニケーション」を武器に戦ってきました。

たとえば、身だしなみや表情、立ち居振る舞いからくる第一印象などがそれにあたるわけです。営業型の職種よりも身なりに気を遣うのは、そんな理由が前提としてあるからなのでしょう。

したがって、商品のスペックや価格が同じだったとしても、営業個人の人間性や信頼感、放つオーラなどによって成功率が大きく変わったはず。営業以外に、これほど非言語的要素が成果につながる職種は他にないと考えることもできます。

ところが、時代は変わったのだと著者は指摘しています。なぜなら、多様性の時代になり、価値観が同じ人が相対的に減少しているから。つまり、これまでの日本型コミュニケーションにおいて相応の価値を持っていた「いわなくてもわかりますよね」という“暗黙のルール”は伝わりにくくなっているわけです。

もちろんそれは、組織運営のみならず、営業活動についてもいえること。つまり、そんな時代だからこそ「言語力」が武器となるのです。(64ページより)

コンテンツマーケティングと言語力

誰かに何かを伝えるために必要なのが、言語力です。「アレ」だの「ソレ」だのと言っていては通じません。

上司から部下に対しても、そう。営業からお客様に対しても、そう。求職者から採用担当者に対しても、そうです。(71ページより)

さらにはマーケティングの観点からも、言語力は強く問われるといいます。

オンライン時代に入り、個人で情報発信して見込み客を増やす取り組みは今後ますます広がっていくはず。サイトやSNSを筆頭に、企業自らが所有して情報発信するオウンドメディアも、すでに全盛期に入っています。

広告代理店に頼むのではなく、自社でマーケティング活動を行なっていくべき時代だからこそ、当然のことながら言語力を鍛える必要性が大きくなっているということです。(71ページより)

「言語力」をどう鍛えるか?

しかし、「言語力を鍛える」とはどういうことなのでしょうか? この点について、著者は次のように述べています。

まずは要求されるレベル感について考えてみます。

「いい言葉とは?」を、深く考えてみるのです。

私は次の2つの切り口が重要だと考えています。

◎目的に合っているか?

◎センスがあるか?

(72〜73ページより)

著者の会社の非営利事業である「強くて愛される会社研究所」の代表理事である杉浦道明さんは、「一流の画家を目指すには、すばらしい絵を描く技法を学ぶことも大切だが、多くのすばらしい絵画を鑑賞することもまた大切である」と述べているそうです。

ちなみに同研究所のメイン事業は、中小企業の経営者や後継者を15〜20名ほど連れての“すばらしい企業”への視察ツアー。ただし、そこで経営、財務分析、マーケティング、評価制度などの「やり方」を学ぶということではないようです。

あくまで目的は、「ああ、自社もこんな企業にできたらなあ」と、経営者のみなさんの感じてもらうこと。つまり、「やり方」よりも「あり方」を学んでもらうわけです。

仮に、業績が不安定で資金繰りに奔走している経営者に対して「多くのすばらしい絵画を鑑賞することも大切」だと伝えたとしても、「そんな場合ではない。どうやったら会社を立てなおせるのか、そのやり方を教えてくれ」といい返されるだけ。どれだけセンスのいいフレーズを思いついたとしても、目的を間違えたらなんの意味もなくなってしまうのです。

営業・マーケティング目的で考えるなら、ワードセンスを磨くよりもまず「目的に合っているか」を自問自答することが重要だということなのでしょう。

たとえば情報収集しているお客様には、正確な情報を提供するべき。また、背中を押してもらいたいと願うお客様には、「この場で決めましょう」とはっきり伝えることが大切なのです。

なお、その際には“イケてることば”を使う必要はないそうです。それよりも大切なのは、相手の現状を理解し、適切なことばを選択できることだから。(72ページより)

インタビューという手段を通じてさまざまな角度から論じられているため、営業を多角的に理解することができる一冊。これからの営業の「変わること/変わらないこと」を見極めるために、ぜひ参考にしたいところです。

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2022年4月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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