『アリたちの美しい建築』
- 著者
- ウォルター・R・チンケル [著]/西尾義人 [訳]
- 出版社
- 青土社
- ジャンル
- 自然科学/生物学
- ISBN
- 9784791774487
- 発売日
- 2022/02/14
- 価格
- 3,300円(税込)
書籍情報:openBD
『アリたちの美しい建築』ウォルター・R・チンケル著(青土社)
[レビュアー] 堀川惠子(ノンフィクション作家)
春の庭は忙しい。足元ではアリたちが活発に走りまわる。その昔、アリの巣がどうなっているのか途中まで掘り起こしたことがある。まさか本当に巣の全体像を可視化する人がいようとは。
著者はアリ研究の第一人者。「低予算のローテク科学」でアリの世界を探求する。アルミニウムや亜鉛を溶かして巣の先端まで流し込み「注入模型」を制作。螺旋(らせん)のトンネルと部屋の連結による巣の謎に迫る。アリたちに色を付けて移動距離を測ったり年齢による働きを調べたり、自らアリの巣を土中にこしらえ、彼らがそれをどう加工するかを観察する(建築計画をアリに尋ねる行為だとか)。精緻(せいち)な研究の書だがユーモラスな描写にカラー写真も満載だ。
これまでアリたちがわが家の庭に住んでいると思っていたが、むしろ地権者は彼らで、人間のほうが土地を間借りしている気分になる。アリ好き、ここに極まれり。西尾義人訳。