7年前に亡くなった詩人が21年前に刊行した作品だ。読者に宛てた39通の手紙からなる。世界を曇りのない目で真っすぐに見つめ、心を動かされた本、音楽、映画に触れながら、平易かつ透明な言葉で、世界との誠実な渡り合い方について語りかける。
例えば、「音楽を聴くのは、胸中に、三本の小さなローソクをともすためです」と詩人は書く。「一本は、じぶんに話しかけるために。一本は、他の人に話しかけるために。そして、のこる一本は、死者のために」
忘れてしまいがちな大切なことに気付かせてくれる言葉にあふれている。(ちくま文庫・792円)
-
2022年5月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです