『フェイスブックの失墜 An Ugly Truth』シーラ・フレンケル、セシリア・カン著(早川書房)

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フェイスブックの失墜

『フェイスブックの失墜』

著者
シーラ・フレンケル [著]/セシリア・カン [著]/長尾 莉紗 [訳]/北川 蒼 [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784152100948
発売日
2022/03/03
価格
2,420円(税込)

書籍情報:openBD

『フェイスブックの失墜 An Ugly Truth』シーラ・フレンケル、セシリア・カン著(早川書房)

[レビュアー] 小川哲(作家)

SNS 自由優先のツケ

 SNSは人々に新しい形の「繋(つな)がり」をもたらした。一度仕事をしただけの人の近況を聞く。卒業してから疎遠になっていた同級生が結婚したことを知る。共通の知人を介して、地元が同じ人と結びつく。共通の趣味を持つ人と知り合い、輪が広がっていく。利用者たちは誰かの投稿というコンテンツを通じてコミュニケーションをする。SNSはインターネット時代における交流や情報のあり方を大きく変えた。そしてその中心にあったのがフェイスブックだった。

 フェイスブックは、SNSという新しいメディアの利点をすべて持っていた。30億ものユーザーがこのサービスを利用した。潮目が変わったのは2016年だ。その年アメリカで大統領選挙があり、ドナルド・トランプが勝利した。

 本書は16年以降、フェイスブックの問題がどのように暴かれ、どのような批判を受けてきたのかを、入念な取材と関係者のインタビューから明らかにしている。フェイスブックはSNSの利点を兼ね備えながら、同時に脆弱(ぜいじゃく)性も抱えていた。フェイクニュースが蔓延(まんえん)し、差別が見過ごされた。人々の交流を促せば、必然的に悪意を持った集団も生まれてしまう。人々を釘(くぎ)付けにするためのアルゴリズムは、しばしば過激な投稿を優先して紹介してきた。

 フェイスブック創業者のザッカーバーグは、可能な限り「表現の自由」は守られるべきだと考えていた。しかし、「表現の自由」にもどこかに線を引かなければならない。誰かを傷つける自由はあるのか。虚偽の情報をばら撒(ま)く自由はあるのか。虚偽の情報と勘違いの差をどう判断するのか。フェイスブックはそういった線引きで常に後手にまわり、結果としてSNSが抱える様々な問題点を顕在化させてしまった。

 フェイスブックを告発することは、SNSとインターネットを告発することでもある。未来のメディアのあり方について考える上で、非常に参考になる一冊だ。長尾莉紗、北川蒼訳。

読売新聞
2022年5月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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