『道徳教室 いい人じゃなきゃダメですか』高橋秀実著(ポプラ社)

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道徳教室

『道徳教室』

著者
高橋 秀実 [著]
出版社
ポプラ社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784591173268
発売日
2022/03/16
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

『道徳教室 いい人じゃなきゃダメですか』高橋秀実著(ポプラ社)

[レビュアー] 鵜飼哲夫(読売新聞編集委員)

 「不徳の致すところで」が口癖のノンフィクション作家が、還暦を迎えるにあたり道徳教育の現場に足を踏みいれ、七転八倒する。「わたしのよいところを探そう」との小学校教科書の設問に、こんなところを「よい」と自画自賛してよいのかと戸惑う人には、道徳は難しいのだ。

 愁眉を開くのは算数のような正解がない道徳の授業を、児童が苦にしない姿勢に接してからだ。なぜ「仲良く」が大切か? 「公平に接する気持ち」はなぜ必要か? すべての問いに「みんながそうしたほうがいいから」と答えればすむと、子供はあっさり言う。だから道徳は「すごい息抜き」になるらしいのだ。

 だが、それでよいのか? 「みんなで仲良く」を前提にするからコミュニケーション障害が生まれるのではないのか。周りと仲良くが高じて悪い仲間に引きこまれたり、正義が暴走したりはしないのか。作家は眉をひそめるばかりである。

 「ひとり」の大切さと限界を重視するドイツの道徳とは違う和の国の人々は、みんなで渡れば怖くないのか――。本書は卓抜なニッポン論にもなっている。

読売新聞
2022年5月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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