アラサー女子の「結婚したい」は本当に自分の意思なのか? 『花嫁未満エスケープ』人気の理由はリアルなストーリー

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アラサー女子の「結婚したい」は本当に自分の意思なのか? 『花嫁未満エスケープ』人気の理由はリアルなストーリー

[文] アップルシード・エージェンシー


(C)「花嫁未満エスケープ」製作委員会

電子コミックが100万ダウンロードを突破、紙のコミック発売も経て今春からはドラマ化でも話題になっている『花嫁未満エスケープ』(2022年4月~、テレビ東京系にて毎週木曜深夜0時30分から放送中)。

原作は付き合って6年、同棲して4年の彼氏がいるアラサー女子の「ゆう」の物語。恋人との生活はマンネリ気味で、なかなか結婚に踏み切らない彼氏にモヤモヤ……そんなとき、高校時代の元カレと偶然の再会を果たす。母親扱いをする今カレと、特別扱いしてくれる元カレ。はたしてゆうが選ぶのは……?

今回は、本作が連載デビューとなった漫画家・小川まるにさんと、リアルな三角関係に悩む「ゆう」をドラマで演じる女優の岡崎紗絵さんに作品の見どころを伺った。

■「修羅場シーン」がドラマでどう表現されるかに、ワクワク


(C)小川まるに/ライブコミックス

――早速ですが、小川先生にお聞きします。「ドラマ化決定!」と聞いたときは、いかがでしたか?

小川:どんなリアクションをすればいいか分からないくらい、現実味がなかったです……(笑)電子書籍が紙の単行本化すると聞いた時はうれしくて泣きましたが、ドラマ化の話は信じられなくて。放送が始まったことで「本当だったんだ!」という気持ちもありますが、いまだに不思議な感じ。

――電子書籍から2年足らずでのドラマ化は珍しいですよね。先生自身も現実味がなかったようですが、ドラマ化が決まったことで「ここ、どうなるんだろう?」と楽しみだったシーンはありましたか?

小川:主人公の「ゆう」と今カレの尚紀が別れる寸前、互いに本気で怒る修羅場シーンがあるんですが、それが楽しみでした。人が本気で怒る演技って、どんな感じなのかなって。

――本作には胸キュンシーンも散りばめられていますが、先生は「怒り」のシーンが気になったんですね。

小川:人が感情むき出しになるところって日常生活の中であまり見られないですよね。ただ感情でいちばん強いのは、怒りだと思うんです。私自身、このシーンは「ここまで怒りを表現することはあるのだろうか」と思いながら描いていたところもあって。そんな怒りをどう演じてもらえるのか、楽しみでしたね。

■「誰か」にもあてはまる、リアルなストーリー

―― 「怒り」を含め「安心」と「不安」、「期待」や「失望」などいろんな感情が交錯するドラマですが、ここからは主演の岡崎さんにも質問です!最初に『花嫁未満エスケープ』の原作や台本を読んだとき、どんな印象をうけましたか?

岡崎:綺麗に描かれすぎていない、リアルな物語だなと思いました。キラキラした理想の恋愛ではなく、現実的。だから同じような経験をされている方もいるんじゃないかなって。日常にありそうなことが詰まっている物語だと思いました。

――「ゆう」は、もやもやした気持ちを抱えながら2人の男性の間で揺れ動きますが、そうした心の動きを表現するのは難しいように感じます。演じることに、プレッシャーはなかったですか?

岡崎:確かに、今カレと元カレの間で揺れる女性を演じきれるのか?という不安や心配は少しありました。ただ監督と「このシーンはどうすべき?」と相談しながら演じられたので、それほどプレッシャーはなかったかなと思います。それに「ゆう」は等身大の女の子だから、考えていることが私にもある程度は理解できました。それも大きかったですね。

――岡崎さんはこれまで、様々なドラマに出演されてきましたよね。今回「ゆう」を演じるにあたり、何か意識されたことはありましたか?

岡崎:このお話では両極端のキャラクター性を持つ、今カレ(尚紀)と元カレ(深見くん)が出てきます。この2人の間で「ゆう」は揺れるんですね。「ゆう」は小さなことも考える人だから、尚紀といながら深見くんのことを考えたり、反対に深見くんといながら尚紀のことを考えたりして、複雑な気持ちになる。その複雑さを理解して演じなければ、と意識していました。

――本当に2人は正反対の性格ですよね。すべて「ゆう」任せのおこちゃま尚紀と、自分だけを特別扱いして見守ってくれる深見くん。この2人に挟まれたら、さぞや複雑な気持ちになりそうな。

岡崎:そうですね。特に難しかったのは、深見くんとのシーンです。彼は洞察力があり、ささいな変化にも気付いてしまう人。この行動では気付かれてしまうから、気付かれないレベルの言い方は……?とラインを見極めるのが難しくて。心の中で「ここはおさえるべきかな?」「でも変化がなさすぎると、分かりづらいな」など、考えながらやっていました。

■作品の中から飛び出してきた「ゆう」

――小川先生、そんな岡崎さんが演じる「ゆう」を見て、いかがでしたか?

小川:実はドラマ化が決まってすぐに、岡崎さんのインスタを見ました。ヘアスタイルをロングからボブにされていたんですが、思わず「ゆうちゃんだ!」と叫びましたね(笑)ゆうちゃんは、何もしなくても人を惹きつける魅力があると思っていたので、岡崎さんはまさに「ゆう」そのもの。演じてもらって本当に良かったなって。

岡崎:本当ですか……!原作者の先生にそういってもらえるなんて、うれしいです。

――先生の中で、岡崎さんは「ゆう」のイメージそのものだったんですね。

小川:笑ってるシーンはめちゃくちゃかわいいけれど、シリアスなシーンは本当にはかなげで、色気もある。そんなところも、ゆうちゃんだと思いました。

岡崎:う、うれしい……。ありがとうございます。

――先生の中で「岡崎さんのこの演技が好き!」といったシーンはありましたか?

小川:真剣なシーンじゃなくて申し訳ないんですが、深見くんが夜に軽トラで登場するシーンがあって。そのとき岡崎さん演じる「ゆう」が「こわっ」っていうんです。時間帯も夜中なので、普通に考えたら怖いですよね(笑)そのときのコメディっぽさがツボでした。

岡崎:あれはほんとに怖いです(笑)

私が好きな「私」でいること

――最後になりますが、先生にお聞きします。本作を通して、いちばん伝えたいことは何でしょうか?

小川:この話は「ゆう」自身が幸せになる話です。自分の置かれている環境や年齢、立場を抜きにして、自分自身が好きな自分でいられたらいい。そんな思いを込めています。周りのことは関係なく、自分が自分を好きでいられる生き方を「ゆう」を通して見てほしいなと思っています。

――このお話は、担当編集者さんと二人三脚でつくられた作品だとお聞きしました。

小川:はい。三角関係や結婚適齢期の女性の気持ちを描こう、と話が決まったあとも結末は決まっていなくて。その都度、その都度、「ゆう」だけじゃなくてみんなが幸せになれるにはどうしたらいいかを探していくようにお話を作っていきました。物語が進み、自分のリアルな友だちのことを思いながら描いていくうちに「自分が好きな自分でいること」という思いを伝えたくなりました。

――そうだったんですね。岡崎さんは、演じるうえで視聴者の方に何か伝えたいことはありますか?

岡崎:自分の人生をどうしたいのか?何が幸せなのか?が大きなテーマだと思います。恋愛を通して、幸せになる道を探していく。「ゆう」は尚紀と深見くんの間で新たな自分を発見して、自分のことをどんどん知っていきます。30歳手前で結婚の岐路に立たされ「本当にこれは自分の意志なのか?」と疑問を持つ。どんな自分でありたいか、考えられる作品じゃないかなと思います。

小川:社会では、自分のことばかり考えるのはあまり良しとしない雰囲気がありますよね。けれど、ためらわずに自分のことをいっぱい考えてほしい。「ほかの人はどう思うだろう?」「こうしたほうがいいのかな?」と周りの様子を伺うばかりじゃなく「自分はどうしたいのか?」と、自分のことを考えてほしいなと思います。

安田あゆみ

アップルシード・エージェンシー
2022年6月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

アップルシード・エージェンシー

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