「カムカム」「筋肉体操」で注目の村雨辰剛の素顔 自宅は古民家、同居人は猫、移動は軽トラック

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村雨辰剛と申します。

『村雨辰剛と申します。』

著者
村雨, 辰剛, 1988-
出版社
新潮社
ISBN
9784103546214
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

日本が好き、和の美が好き。

[文] 新潮社


村雨辰剛さん

「カムカムエヴリバディ」「みんなで筋肉体操」で注目された庭師の村雨辰剛さん。18歳のときに来日、語学講師を経て庭師として身を立て、日本国籍も取得しているスウェーデン出身の村雨さんが、これまでの半生を綴った自伝『村雨辰剛と申します。』の刊行を機に、庭師として生活、俳優としての展望を語った。

 ***

――スウェーデンから来日して一五年。庭師、モデル、俳優と多岐にわたって活動す村雨辰剛さん(二〇一五年帰化・改名)にうかがいます。

 NHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」、お疲れ様でした。最後のほうで再び登場したのは、ロバートさんファンには嬉しかったんじゃないでしょうか。

 あの二人(上白石萌音さん演じる主人公・安子と、村雨さん演じる進駐軍将校ロバートの夫婦)がアメリカに行ってどうしていたのか気になる、という反響が視聴者の方から多くあったと聞いています。「ロバートさんは再登場しないんですか?」と聞かれることもあったのですが、最後にもう一度出ることは内緒にしていました。

――私も安子時代のパートでは、毎朝、ロバートさんの登場を楽しみにしていた一人ですが、ロバート役で村雨さんを知ってファンになったという方も多いと思います。

「ロバートさんですか」と声をかけられるようになりました。あれは役なのでちょっと複雑ですが(笑)、それだけ見てくださった方が多いということだと思います。

 僕はツイッター(@MurasameTatsu)とインスタグラム(tatsumasa.murasame)のアカウント、それからユーチューブに「村雨辰剛の和暮らし」というチャンネルを持っているのですが、フォロワーさんがすごく増えて、とても嬉しかったです。コメント欄にドラマの感想をいただくこともあって、当初は予想外の抜擢で不安だったのですが、やらせていただけて本当によかったと思っています。

――撮影の間は、庭師のお仕事はどうなさっていたんですか。

 庭師としては、今は独立して個人事業主としてやっています。

 請け負っている庭の施主様は、ありがたいことに、みなさん、テレビや撮影などの仕事もあるということを理解してくださっています。ですから、長期の撮影があることをお話しして、待っていただいていました。

 もちろん、お引き受けした庭は僕の持てるものをすべて注いで、納得した仕上がりにしたいと思っていますので、待っていただいた分は、自分の撮影が終わったらすぐに後れを取り戻せるようがんばりました。

 僕は山田風太郎さんなどの時代小説が好きで、ほかのジャンルの本も勉強のためにももっと読まなくちゃと思うのですが、テレビの仕事が増えれば、それ以外の時間は庭の仕事にあてることが優先になります。読書や勉強の時間をどう作っていくかというのは、これからの課題。時間のやりくりって、本当に難しいです。

――そして、今回、ご自身の本が刊行になりました。

 少年のころから日本が好きで独学で日本語を覚え、やがて日本人になるまで、そして今現在のことを、ライターさんにお話しして原稿にしてもらうという方法で本にしました。親方に弟子入り修業して庭師になり独立するまでの過程や、普段の生活について、心酔する和の美についても思うことを話しました。

 本という形になるのは、やっぱり嬉しいですね。スウェーデンの家族にも送ります。日本語は読めませんが、きっと喜んでくれると思います。

――確かに日本好きぶりがたっぷり語られました。ご自宅の、今では珍しい床の間や掛け軸のお話もありましたね。

 庭のある和風民家を借りて移ったんです。純和風な日本の暮らしをしてみたくて。それに、置く場所ができたので資材や機材が充実し、作業用の軽トラを停める場所にも困らなくて、庭師としての環境を整えられたのも僕にとってはとても大事なことでした。

――軽トラの前はマッチョなフォードに乗ってましたね。車がお好きなんですか。

 好きですね。父親が車もバイクも好きで、いつも家にはありましたし。

 四年前に日本で運転免許を取りました。本当は旧車のピックアップで仕事をしたいのですが、エンジントラブルが多くて仕事に差し支えますし、日本の狭い道にはやっぱり軽トラが一番ですね。植木も資材も、道具もたっぷり積めるので、今は庭師仕事には軽トラが欠かせません。もう少し余裕ができたら、また旧車を物色しようかな。

――今のお住いでは、猫ちゃんを飼ってらっしゃるんですよね。

 芽吹という三毛猫です。普段は「芽ちゃん」と呼んでるんですけれども。今回の本にも写真でちょっとだけ登場してもらいました。

 五年前、電車の踏切脇でひとりで鳴いているところを見つけたんです。生後数週間ぐらいでした。踏切の近くなんかにいたら危ないから、迷わず連れて帰ってきました。

 子供のころから動物は大好き。トカゲ、ウサギ、犬、猫、それにブタも飼ったことがあるし、馬がいたこともあります。でも、好きだからと必要以上にかまったり、溺愛したりということはないです。昔も今も、動物は「同居人」みたいな感じに思っています。

 家の周りは野良猫や狸もいますから、芽ちゃんは今まで外に出してこなかったんですが、最近、古くなっていた縁側をリフォームして竹垣の囲いも付けたので、僕がいるときだったら縁側に出してあげようと思っています。

――お話のあったユーチューブのチャンネルで、リフォームの様子を投稿していますね。縁側リフォームもそうですが、畳の床板を張り直したり、大工仕事もとても器用になさいますね。

 スウェーデンでは、古い家を家族みんなでリフォームして住み続けるのは普通なんです。小さいころからよく手伝わされました。どこの家も、工具などが大体揃ってますから、使い方や扱い方を自然に覚えていくんでしょうね。

 日本の民家を修繕・リフォームするのは、実はとても勉強になるんです。茶室には茶庭が付きますよね。茶室を作る大工、茶庭を作る庭師、お互いがお互いの仕事をある程度理解していることが必要だと思います。日本家屋を分解したり、再構築するのは構造を知ることにもなります。

――これからもテレビのお仕事、そして庭師のお仕事、両立して発展させていく感じですね。

 ドラマの仕事をして、演じることへの興味がすごくわきました。素人に近い僕ですが、これまで本当にさまざまな役を演じさせてもらえました。本当にありがたいことで、演技や表現に関しては、ワークショップなどでもっと勉強したいと思っています。いろんな自分の引き出し方を見つけたい。

 そんな風に考えるようになって、映画やドラマの見方も変わりました。俳優さんの何気ない表情やしぐさが何を表現しているのかを考えたり、喜怒哀楽の表し方もいろんな方法があるんだと気づいたり。

 庭師としてのこだわりは、日本の美、和の美を追求した、オーソドックスな仕事をしていくこと。時間がないからと妥協したり、目指した完成度を諦めることはしたくないと思っています。

――最後に、読者のみなさんにひとことお願いします。

 和服や庭師の姿のカラー写真も満載の今回の新刊です。ぜひ手に取ってみてください。そして、SNSでもユーチューブのチャンネルでも、感想をコメントしてくださったらとても嬉しいです。お待ちしています。

 また、これからも、和の美、日本の伝統について、勉強しながらいろいろ挑戦して発信していきますので、ぜひ見てください。

聞き手・編集部 写真撮影・木村直軌

新潮社 波
2022年6月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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