『はじめて部下を持った人のための 超リーダー力』
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「はじめて部下を持った人」がリーダー力を発揮するために必要なこと
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『はじめて部下を持った人のための 超リーダー力』(大西みつる 著、ぱる出版)の著者は、リーダーシップコーチとして年間150日の企業変革コーチングとリーダーシップトレーニングを行っているという人物。のべ4万人以上の管理職、ビジネスリーダーと向き合っているのだそうです。
そんな経験から実感しているのは、「業種は違えども、“求められるリーダー行動”の基本はなにも変わらない」ということ。しかも初めて部下を持つリーダーの場合は、うまくいかないことのほうが圧倒的に多くもあるでしょう。
だから、はじめて部下を持ったリーダーにとって、リーダーとしての基本を学び、思い込みによるリーダーの仕事、リーダーシップを正しく理解し直し、現場実践していくことが自身の成長に繋がるというのは、当然のことです。
特にリーダーシップについては、単に「引っ張る・まとめる」という言葉だけがひとり歩きしています。(中略)引っ張り型のリーダーシップからは、会社が持続的に成長していくためのイノベーションが生まれません。そのことにはやく気づくべきです。(「はじめに」より)
こうした思いがあるからこそ、本書では「はじめて部下を持ったリーダー」に向け、リーダーとしての具体的実践行動を◯×形式で紹介しているのです。当然のことながらそれらは、著者自身の経験や企業研修で目にしてきた実例をベースにしたもの。
しかも立命館大学経営学部客員教授としてリーダーシップを研究している立場に基づき、「実践で活用できるリーダーシップ理論」をも交えているのだそうです。それは、リーダーシップの基本を見なおし、実践行動を明確にして、自分の意識と行動を修正することにより、リーダーとして大きな成果を得るための実践的かつ生産性の高い方法なのだとか。
きょうは「はじめて部下を持つリーダーの基本の『き』」のなかから、2つを抜き出してみたいと思います。
リーダーシップは後天的に開発できる?
×リーダーシップは先天的な才能
◯リーダーシップは後天的に開発できる
リーダーシップを学習していくためには、次の4つのポイントを押さえていることが大切なのだそうです。
① リーダーシップについて知る、理解する(基本を押さえる)
② 自分のことをよりよく理解する(自己理解と他者理解)
③ 組織運営上好ましくない自分の行動を修正する、自己表現を変える
④ 経験で学習する
(17ページより)
そしてリーダーシップを体得していくためには、継続的に行うことが大切。いきなり大きく変わろうとしたら、学ぶ意欲が高すぎたりすると、自分を見失うことにもなるためうまくいかないわけです。
いわばリーダーシップは、日々の経験の積み重ねによってじっくり鍛えられていくものだということ。それだけに、リーダーシップについての基本とその育み方をきちんと理解しておく必要があるというのです。ポイントは、大きく変えようとせず、小さくコツコツと取り組むこと。
そして、いまよりもうまくやるためには「やり方」を変えることが必要。はじめて部下を持ったリーダーは、リーダーシップの発揮の仕方がわからず、いままで一緒に働いてきた上司のリーダーシップを真似るところから始めているかもしれません。しかしリーダーシップを発揮していくにあたって効果的なのは、リーダーシップの基本理論を理解すること。
私は、「基本を見直す」、「小さく変える」、「できることからやる」の3つの視点で小さな修正を加えることで、自分自身のリーダーシップが育まれていくことを、企業研修の参加者に声を大きくして伝えています。(20ページより)
はじめて部下を持ったリーダーは、大きく理想を広げすぎるべきではないと著者はいいます。いうまでもなく、それでは理想と現実とのギャップに苦しむことになってしまうから。まずは小さく、自分を変化させていくことから始めたほうがよいということです。(16ページより)
「完璧さ」か「修正」か
×部下に常に完璧さを求める
◯部下に常に修正することを求める
はじめて管理職になった方への研修を行うなか、「はじめてリーダーを任された方の多くが、部下は自分が指示したことを具体化できるものだという思い込みに陥っている」と著者は強く感じているそうです。
簡単な事務作業ならいざ知らず、私たちが抱えるビジネスの課題は複雑さが増し、何がお客様の最適解になるのかを徹底的に追求していくことが求められています。
完璧さはすぐに陳腐化してしまう可能性もあり、物事を瞬時にリメイクしていく修正力が求められています。
そもそも仕事とは共同作業で行うことが基本です。上司と部下で話し合いながら、修正を繰り返して最適解を導いていかなければなりません。(38ページより)
だからこそ、指示したことの5割を部下が達成できていれば、まずはねぎらいのことばを部下にかけるようにすべき。仕事の結果だけで部下に注文をつけるのではなく、指示命令したあとの部下の取り組みや仕事の過程にも着目し、できていることについてはしっかりと具体的に伝える必要があるのです。
そしてそのあとに、ブラッシュアップしてほしい点を具体的に伝え、再度提案してほしいことを伝えていけば、共同作業が成り立つわけです。
まず大切なことは、部下に積極的に仕事にあたってもらい、部下を介して仕事の成果を上げていくことがマネジメントの本質だと認識することです。
仕事の結果のみを見て文句を言い、できていない点だけを指摘するようなリーダー行動では、部下もモチベーションが下がるだけではないでしょうか。(40ページより)
相手の立場や力量を勘案し、「5割できていれば、ベストを尽くしてくれた」のだと評価することが大切だという考え方。なぜなら、部下を積極果敢に動かすことこそがリーダーの役割だからです。(37ページより)
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はじめて部下を持ったリーダーは、なにも恐れる必要はないのだと著者は主張しています。本書の内容を実践してみれば、リーダーとして着実に成長していけるということなのでしょう。部下との関係に悩むリーダーは、手にとってみてはいかがでしょうか。
Source: ぱる出版