『日本の国会議員 政治改革後の限界と可能性』濱本真輔著(中公新書)
[レビュアー] 井上正也(政治学者・慶応大教授)
90年代に行われた政治改革は、日本の政治を大きく変えた。気鋭の政治学者による本書は、国政の担い手たる国会議員に着目し、彼らが政治改革後にどのように変化したかを、人材、選挙、政策形成、価値観、政治資金といった様々な視点から描き出している。
かつての政治家の主な役割は、地元や支持団体の利益を代表することにあった。だが、政治改革によって有権者が個人よりも政党を選ぶようになると、後援会中心の選挙は衰退し、特定分野に精通することで、支持団体の利益を守ろうとする族議員も減った。
地域や団体の利益代表の役割が縮小し、政策志向型の議員が増える一方で、変わらないのは国会制度や政党組織である。
国会での事前審査制や会期の短さは、議員の充実した審議を難しくしている。また政党の組織化が十分でないため、選挙では未(いま)だに個人中心の集票活動が続いている。
政治改革が意図した政党や政策による政権選択がなぜ起こらないのか。国会議員の実態をコンパクトにまとめつつ、現状の問題を明快に解き明かしている。