『WORLD WITHOUT WORK (原題)A WORLD WITHOUT WORK AI時代の新「大きな政府」論』ダニエル・サスキンド著(みすず書房)

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WORLD WITHOUT WORK

『WORLD WITHOUT WORK』

著者
ダニエル・サスキンド [著]/上原裕美子 [訳]
出版社
みすず書房
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784622090700
発売日
2022/03/14
価格
4,620円(税込)

書籍情報:openBD

『WORLD WITHOUT WORK (原題)A WORLD WITHOUT WORK AI時代の新「大きな政府」論』ダニエル・サスキンド著(みすず書房)

[レビュアー] 佐藤義雄(住友生命保険特別顧問)

仕事減る超格差社会

 AIの急速な発達が多くの人間の仕事を奪うのかは今日最も人々の関心の高いテーマの一つだろう。過去の技術革新と同様、AIは定型的な仕事から人間を解放し、非定型で創造的な仕事に向かわせることで経済を成長させ、人間の仕事の需要をむしろ増加させるのだという楽観論もあるが、著者はこれに警鐘を鳴らす。

 AIの発達の現状から将来を予測すると、AIは自律的に学習する能力を備えることにより非定型的なタスクの領域にどんどん進出してくる。そして高スキルを要求される非定型的なタスクも徐々にAIに奪われ、一部の先進的な仕事か、重要ではあるが低スキルとされ報酬の少ない仕事しか残らない超格差社会が生まれる可能性が高いと著者は考える。仕事の絶対数がじわじわと減り、仕事のない人が目に見えて増加する「仕事の足りない世界」が到来するのだ。

 よく言われる教育による人的資本強化という解決策には期待できない。新しいスキルを学ぶ力を全員が持っているわけではないことに加え、そもそも仕事の需要そのものが十分にないからだ。また国民全員に政府が給付金を支払うユニバーサル・ベーシックインカムは社会の納得感が得られないとして、何らかの形での社会への貢献を受給者に求める「条件付きベーシックインカム」の支給を著者は提言する。有り余る時間をどう過ごすかという「余暇政策」も重要となる。仕事に代わる生きがいが必要なのだ。

 そして、今後巨大テック企業が支配するであろう市場に分配機能を期待し続けることはできず、国家が乗り出すべきと論じる。GAFAなどから税金を確実に徴収したり、それらの企業の株式などからなる国家ファンドを組成したりすることで、国家が分配の財源を確保するなどの具体策の記述にも紙幅を割いている。

 著者の唱える未来予想や大きな政府論には異論も多いだろう。だが本書は今後ますます重大となるテーマについて、詳細なデータをもとに幅広い視点で論じた力作として評価したい一冊である。上原裕美子訳。

読売新聞
2022年6月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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