<東北の本棚>国際情勢交えた仕事論

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防衛事務次官冷や汗日記 失敗だらけの役人人生

『防衛事務次官冷や汗日記 失敗だらけの役人人生』

著者
黒江哲郎 [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784022951540
発売日
2022/01/13
価格
935円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<東北の本棚>国際情勢交えた仕事論

[レビュアー] 河北新報

 防衛省「背広組」、事務方トップまで務めた南陽市出身の著者が防衛政策の舞台裏を語る。遠い世界のことに思えた国際情勢が少し身近になるとともに、成功と失敗の教訓は仕事論としてうなずける。

 東西冷戦終結後、イラクのクウェート侵攻(1990年)に揺れた日本。国内では95年の阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件を機に、自衛隊に求められる役割が変化した。担当局長として関わった安全保障法制成立(2015年)など、37年間のキャリアに安保の推移が映し出される。

 教訓の一つがチームワーク。ソ連の大韓航空機撃墜事件(1983年)を受け当時の防衛庁(現防衛省)が情報組織を統合した際、著者は上司の姿に「大事の成就には信念を持ったキーパーソンが存在する」と確信。次官辞任の原因になった2017年の南スーダン国連平和維持活動(PKO)日報問題などを踏まえ、1人で抱え込まないことと謙虚さが大切と呼び掛ける。

 職業人に重要な要素も「PKO」と言うが、こちらは「プロフェッショナリズム」「覚悟」「思いやり」だ。

 予算削減を迫られ、過労で倒れたことも。財務省担当者に「役人は代理がいるが、夫、父親は誰も代われない」とさとされた逸話がサラリーマンの琴線に触れる。(会)
   ◇
 朝日新聞出版03(5541)8832=935円。

河北新報
2022年6月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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