真面目さで損しがちな人の生き残り戦略〜仕事に演技を取り入れてみるヒント

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真面目さで損しがちな人の生き残り戦略〜仕事に演技を取り入れてみるヒント

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

あなたもご存知だと思いますが、会社は本当に理不尽な世界です。

会社での評価は学校のテストのような客観的に判断する手段ではなく、生身の人間が決めます。

極端な話をすれば、仕事がろくにできない人がうまく立ち回って出世し、能力がある人が左遷になったりすることだってあるのです。

私は11年間のサラリーマン生活の中で、能力がある人が評価されず安い給料で、しかも不本意な部署で働かされる悲惨な姿をたくさん見てきました。

あなたにはそんな思いを絶対にさせたくありません。

この理不尽な世界に適応し、勝ち抜くためにはやはり戦略が必要です。(「はじめに」より)

つまり、『仕事ではウソをつけ』(菊原智明 著、光文社)というタイトルが意味するのは「勝ち残るための武器と戦略」を持つべきだということ。いまの会社で悔しい思いをしたり損したりすることなく、しっかりと評価され、結果を出すためには、“できる人を演じる”ことが大切だという考え方なのです。

「今日からできる社員に生まれ変わる」と自分自身をイチから変えようとすれば、実際の自分とのギャップに苦しみますが、演技であればそういった葛藤はありません。

弱者が強者を出し抜くには演技が最も勝率の高い方法なのです。(「はじめに」より)

では、そのためにはどうすればいいのでしょうか? 3章「理想の人物像の演じ方」のなかから、「立ち振る舞いのポイント」に焦点を当ててみることにしましょう。

実に93%が言葉以外の要素で決まる

たとえば、企画を通すための大切なプレゼンに失敗したとしたら、そこからまずはなにをするでしょうか? 多くの場合、「もう少しこの内容について練りなおしてみよう」と、内容をブラッシュアップすることを考えるのではないでしょうか。

もちろん、内容を練りなおすことにも意義はあるでしょう。けれど、もしかしたら問題は、内容ではなく自分自身の立ち振る舞いや話し方にあるかもしれない。著者はそう指摘しています。

何気ない動作やことばづかいの問題には、意外と気づきにくいもの。しかも、自分が抱いているイメージと現実には、かなりのずれがある場合が少なくないというのです。

著者も、Zoomの研修の際に録画してもらった自分の動画を見て、「こんなに体を左右に動かしていたのか」とか、「話に全然間がないぞ」とガッカリしたことがあるそう。しかし、自分の姿を見たり、声を聴いたりした結果、「こんなはずじゃない…」と感じた経験は誰にでもあるはずです。

だとすれば、自分では気がつかないうちに相手に悪い印象を与えていたことも、充分にありうるもの。

アメリカの心理学者アルバート・メラビアンによると、相手とコミュニケーションを取る時「話す内容は全体のわずか7%しか影響を与えない」と言います。

その他の表情や身振り手振りなどのボディーランゲージは55%も影響しています。

話し方についても38%と負けず劣らず影響します。

ですからせっかくいい内容を話したとしても、ボディーランゲージや話し方が悪いと相手にほぼ伝わらないということになってしまうのです。(83ページより)

そこで著者は、「普段、自分がどんな姿でどんな話し方をしているのか」を把握したり、「演技がきちんとできているか」をチェックするため、自分の姿を録画してみることをすすめています。

リアルで録画してもいいでしょうし、ZoomやTeamsの録画機能を利用するのでもOK。自分の姿を客観的にみるのは照れくさいものでもありますが、そこからは大きな気づきを得られるといいます。(82ページより)

先回りして仕事をする人材はいつでも必要とされる

「いわれてからやっと重い腰を上げる」といった人は少なくありませんが、その一方には「やるべきことを先読みしてやってしまう」人もいるもの。そういうタイプは、いつの時代も必要とされる存在です。

たとえば、部下や後輩に「これやっておいてもらえる?」と仕事を頼んだとしましょう。そのとき後輩がサラッと「その仕事でしたらやっておきましたよ」と答えたとしたら、驚くと同時に「なかなかやるな」と見方が変わったりもすることでしょう。

著者とつきあいのある社長さんが、「私がいう前に先回りして仕事をする社員がいた」と話していたことがあったのだそうです。その社員はのちに会社を辞めて独立し、いまはかなりの成功をおさめているのだとか。

社長さんは、つくづく「もっと大切に扱うべきだった」と後悔していると話していたといいます。つまり、そういった人材は職場からいなくなっても、その価値を評価されるものなのでしょう。

自己分析と同じように、あなたが働く職場を“舞台”だと思ってよく分析してみてください。

誰がどんな仕事をしていて、どんなサイクルで動いているか、どんなルーティンワークを行っているかは、少し観察すれば見えてくるはずです。

その上で「その仕事でしたらもうやっておきました」という立ち振る舞いができるように目指してください。

少し応用的な要素ですが、こういった要素も理想の人物像に入れられると、グッと社内の評価なども上がってきます。(85ページより)

大切なのは、自分がいる職場をよく観察すること。そして、そこから感じ取ったものをもとに“先回りの立ち振る舞い”ができるように心がけること。

毎日働く職場は“日常”の一部であるだけに、なかなか「観察しよう」と意識する気にはならないものかもしれません。しかしそれができれば、周囲からの評価もおのずと上がるわけです。(84ページより)

営業コンサルタントである著者は、2011年の著書『面接ではウソをつけ』(星海社新書)において、「弱者がいかに就職活動を勝ち抜くか」ということを訴えていました。

その延長線上にある本書は、就職戦線を勝ち抜いていま現場にいるビジネスパーソンが目の前の壁を乗り越えていくにあたり、大きな力となってくれるはずです。

Source: 光文社

メディアジーン lifehacker
2022年6月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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