ニッポンの中心で愛国を叫ぶ獣たちに

レビュー

10
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愛国の起源

『愛国の起源』

著者
将基面 貴巳 [著]
出版社
筑摩書房
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784480074843
発売日
2022/06/09
価格
946円(税込)

書籍情報:openBD

ニッポンの中心で愛国を叫ぶ獣たちに

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 ニッポン凄いとかクール・ジャパンとか美しい国へとかを見聞きすると心が躍る。そんなアナタにお薦めできるのが『愛国の起源』。中韓嫌悪や憲法恐怖が重症で何かありゃ反日だ売国だと騒ぐほどのアナタなら、今すぐ書店に走れ! と背中を押したい解毒剤です。

 一方、「愛国心とは、ならず者たちの最後の逃げ場」というサミュエル・ジョンソンの至言を床の間に飾り、「B級愛国=売国」なる公式を編み出し(B級のBをaikokuにつなげると……)、「売国を愛国と書く三代目」なんて川柳をデッチあげるワタシにとってもこの本、眼から鱗が落ち脳から鬱が抜ける強壮剤でした。

 著者の将基面貴巳は政治思想史の研究者ながら専門書以外でも達者な書き手。若い世代向けの『従順さのどこがいけないのか』(ちくまプリマー新書)は、読むと頭と心が楽になる実用書の域で、読後もう2冊買って知り合いの子の高校生と中学生に贈ったくらい。

 今回の新書も、古代ローマから18世紀の英国、そして明治期の日本までをたどり、多元多様多義多彩なパトリオティズムのありようと(愛の対象は国に限らなかった!)、それが19世紀以降の偏狭偏頗偏陋偏屈な愛国へと煮詰まっていく流れを明らかにしていて、それだけですでに名著。最後には、この21世紀のウクライナ侵攻の時代にパトリオティズムを拗(こじ)らせたり捨てたりするのではなく善用する処方箋まで出してくれる。

 さて、今度は誰に送りつけてやろうかね。

新潮社 週刊新潮
2022年6月23日早苗月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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