『商店街さんぽ ビンテージなまち並み50』あさみん著(学芸出版社)
[レビュアー] 読売新聞
地の果ての絶景や、貴重な一瞬を切り取った一枚を集めた本は数多くあるが、この本はその正反対。日本各地の“いつもそこにありそうな”商店街の写真を集めて面白い本になるのか。帯には「一周回ってかっこいい。」と書いてあるが、半信半疑だった。
だが、読み始めると、とても魅力的なのだ。写真から、総菜や食材のかおりがしてきそうだったり、お店の人と買い物客のおしゃべりが聞こえてきそうだったり。振り返れば、学生時代、海外を格安旅行していて一番楽しかったのは、名所旧跡の類いではなく、生活感あふれる現地のマーケットを訪ねた時だった。
地方の商店街は衰退傾向にあり、「早く行かないとなくなるかもしれない」という著者の焦りは的外れではない。“絶景”は日常にもある。今こそ行こう、商店街に。(十)