【気になる!】文庫『北条時宗と安達泰盛』村井章介著
[レビュアー] 産経新聞社
蒙古襲来を2度も跳ね返した“救国の英雄”の素顔は、「立場上国を背負って立たざるをえなかった、悩み多き凡人」だった―。
鎌倉幕府の執権、北条時宗の実像に迫った一冊が文庫化された。著者は中世史が専門。原著はNHK大河ドラマ「北条時宗」(平成13年)によるブームを当て込んで刊行されたが、当時は数多くの関連本に埋もれてしまったという。安達泰盛は幕府重臣で、蒙古軍に突撃する姿が教科書でお馴染みの竹崎季長(すえなが)に対し恩賞を与える判断をした。戦功を直訴する季長と泰盛の対話場面など蒙古襲来の時代背景が興味深い。(講談社学術文庫・1221円)