優秀なリーダーの共通点、できる部下が育つ「ポジティブフィードバック」とはなにか?

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優秀なリーダーの共通点、できる部下が育つ「ポジティブフィードバック」とはなにか?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

上司やリーダーにとって、「部下やチームがうまく機能しない」「成長しない」「結果を出すことができない」などの悩みは大きな課題。しかし、「結果の出せるビジネスパーソン」であるだけでは、いい上司、いいリーダーにはなれないもの。

なぜなら、それ以上に「成果の出せる部下」を育てることが、いい上司であり、いいリーダーの仕事だから。

国際エグゼクティブコーチが教える 人、組織が劇的に変わる ポジティブフィードバック』(ヴィランティ牧野祝子 著、あさ出版)の著者はそう主張しています。

国際エグゼクティブコーチという立場上、キャリアに関する課題や悩みを解決するためのサポートが重要な仕事。そのため、日常的に多くの上司やリーダー、部下の立場にある人たちと会い、話を聞いているのだそうです。

そうした仕事を始めて驚いたのは、「上司がフィードバックをくれない」という悩み相談の多さ

世界中のどんな企業でも(日本では特に多いそう)、実績があり、仕事ができると認められているにもかかわらず、上司からフィードバックがないため悩み仕事に集中できなくなっている部下が多いというのです。一方、活動のプロセスで出会ってきた優秀なリーダーたちには、別の共通点があったといいます。

彼らに共通していたのは、戦略的に組織の方向性を示すと同時に、部下に「見ているよ」「認めているよ」といったポジティブなフィードバックを頻繁に行ってくれることでした。

「強み」や「得意」を認められたら、誰だって嬉しいものです。実際、彼らのポジティブフィードバックは、国籍や年齢、バックグラウンドを問わず成果がありましたし、私もリーダーになってから、彼らに学んだポジティブフィードバックを心がけたところ、様々な国や地域出身の部下たちにも効果が感じられました。(「はじめに」より)

そこで本書では、そんなポジティブフィードバックの効果と具体的な活用法を明らかにしているわけです。Chapter 1「ポジティブフィードバックが自ら動く『できる』部下を育てる」に焦点を当て、基本的な考え方を確認してみましょう。

思いやりを言語化した良質なコミュニケーション

人は誰かのことばによって励まされたり、力をもらったり、心が救われたりするもの。多くのビジネスパーソンから話を聞いてきた著者も、そのことを実感しているようです。

優秀なリーダーについてヒアリングをすると、日系、外資系にかかわらず、「リーダーのポジションが上位であればあるほど、ポジティブフィードバックが上手である」という意見が多数寄せられたというのです。

アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズや、グーグルのセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジが師事した天才コーチであるビル・キャンベルも、部下への声がけが素晴らしかったことで有名。ビルは「人のいちばんいいところや最高の業績を(いつも)強調」して伝えていたといいます。

彼らのような、必要な時に相手を思って肯定的な言葉がけのできる、いわゆる「ポジティブフィードバックの天才」が、部下やチーム、組織を動かし、成長を促し、導いてきたというわけです。(24ページより)

「ポジティブフィードバックの天才」からは、部下は離れていかないものだと著者はいいます。なぜなら部下は、「ポジティブフィードバックをしてくれて、自分を信じ、成長させてくれるリーダーにはずっとついていきたい」と思うものだから。

事実、外資系や海外の企業では、「上司や先輩に誘われたから、同じ会社に転職することにした」という話がよくあるそうです。これまでに5回転職したという著者も、そのうち2回は、かつて一緒に仕事をしていたリーダーから誘われたためついていったのだとか。

著者が「リーダーからのポジティブフィードバックは、部下にとっての『ギフト』」だと述べているのも、自身の体験があるからなのでしょう。「ギフト」をくれるリーダーに、部下はついていきたくなり、リーダーとともにあるために成長するというわけです。(22ページより)

フィードバックとポジティブフィードバックとの違い

フィードバックとポジティブフィードバックは、似ているようで大きく違うのだそうです。

▶︎フィードバック → 人や組織に対する反応・意見・評価のこと

▶︎ポジティブフィードバック → 成長のための、相手への良質なコミュニケーション(33ページより)

つまりポジティブフィードバックとは、相手の行動、存在や結果を「承認」したことを肯定的なことばで伝える行為。相手の可能性を信じ、成長を第一の目的として行うわけです。

「肯定的に」「思いやりを持って」コメントするため、ポジティブフィードバックを受けた側は「大切に扱われている」と感じ、傷ついたり凹んだりせず、お互いに前向きに進めるのです。(32ページより)

上司の仕事はポジティブフィードバックが9割

ポジティブフィードバックで認められる環境で仕事をしていると、脳内で幸福物質のドーパミンが分泌されるといいます。そのため、幸福感を感じるだけでなく、モチベーション、学習機能、集中力、記憶力など全てがアップするというのです。その結果、さらに成果を出せる「勝ち体質」になるのだということです。

「やりたい仕事」をこなして、その成果をさらなるポジティブフィードバックで認められ、感謝されることで、その好循環がより加速され、ワクワクいっぱいの無敵のチームとなるわけです。(38ページより)

ポジティブフィードバックが組織に根づくと、自然と部下が張り切って自ら動くようになるもの。つまりそれは、部下が力を発揮できる環境が整ったということです。

組織には必ず計画や方針がありますので、上司は、部下にビジョンの方向性を示し、ワクワクする目標を与え、メンバーそれぞれの強みが活かされるタスクをアサインしたら、後は部下からの提案に対し、「いいね、やってみて!」と、背中を押すポジティブフィードバックを行うだけで、人、組織が劇的に変わります。(38ページより)

大切なのは、ポジティブフィードバックによって『肯定的なカルチャー』を構築すること。それができたら、あとはチームを信じて任せるのみ。したがって、上司の「仕事はポジティブフィードバックが9割」なのだと著者はいうのです。(36ページより)

ポジティブフィードバックが習慣化し、互いに高め合うことのできる職場環境で働くと、社員のモチベーションが上がると著者は断言しています。各人がより前向きに仕事に取り組めるような環境をつくっていくために、ぜひとも本書を活用したいところです。

Source: あさ出版

メディアジーン lifehacker
2022年6月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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