『寝ても覚めてもアザラシ救助隊』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
ただただ、そばにいたい……。 ああ、限りなきアザラシ愛!
[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)
本書には冒頭から最後までアザラシへの愛が詰まっている。小学生で出会い恋い焦がれ、現在は日本で唯一のアザラシ保護施設「オホーツクとっかりセンター」の飼育員として働く著者のアザラシ愛は飼育員仲間でさえ「ちょっと理解できません……笑」というほどのものらしい。
アザラシ科、アシカ科、セイウチ科に分かれる海棲哺乳類鰭(きき)脚(ゃく)類はヒレ状の脚を持つ。耳たぶがあって陸上では脚を使って歩くのがアシカ、耳たぶがなくて這って移動するのがアザラシらしい。
アザラシのそばにいたい、と彼女が選んだのは獣医になる道だった。アザラシの保護活動をしている施設が北海道紋別市にあるとネットで知り就職したいと願うも募集がなく、一度は諦めた。
そもそも水族館の獣医師になるのは狭き門である。某水族館の嘱託獣医師のもとで働く機会を得て腕を磨くこととなった。二年後、ラッキーにもセンターに欠員が出て晴れて飼育員として雇われた。
アザラシというと漫画や写真でお馴染み、氷上にいる真っ白な毛でおおわれた赤ちゃんを思い浮かべる人も多いだろう。これはゴマフアザラシ。日本全国の動物園・水族館でよく見る「ゴマちゃん」だ。オホーツク海には他に三種類のアザラシがいて保護活動にも力を入れている。
春には母親とはぐれた幼獣が見つかる。通報を受けて探しに行くが広いオホーツク海沿岸で一頭のアザラシを見つけるのはたいへんだ。
秋には定置網漁に入ってしまい、混獲された個体がやってくる。漁業関係者にとっては害獣だ。とはいえ彼らも嫌うだけでなく協力してくれる人も多いようだ。可愛いだけでは済まないのだ。
子どもの頃からの夢をかなえ、さらにアザラシの生育環境を整えることにやりがいを見出した女性は、まだまだやりたいことがたくさんありそうだ。