「日本病」への処方箋 その答えがここにある

レビュー

5
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか

『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』

著者
永濱 利廣 [著]
出版社
講談社
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784065283981
発売日
2022/05/18
価格
924円(税込)

書籍情報:openBD

「日本病」への処方箋 その答えがここにある

[レビュアー] 田中秀臣(上武大学教授)

「低所得・低物価・低金利・低成長」に長く落ち込んでいる日本のようになるな、というのが世界の金融・財政政策立案者たちの問題意識だ。この不名誉な現象は「日本化」とも「日本病」とも呼ばれている。永濱利廣『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』は、まさにこの問題に取り組んだ意欲的な著作だ。

 日本病の真因は何か。不十分な規模の財政政策と、判断が遅れた金融政策がもたらしたデフレの長期化である。したがって処方箋も明瞭だ。積極的な財政・金融政策の活用である。

 多くの人がもつ不安にも率直で明瞭な回答を与えている。

 例えば「なぜ給料が伸びないのか」。デフレが続くために経済が縮小し、多くの企業や働く人達が自分の現状を守るのに必死だからだ。それが人材の流動化を拒み、時代遅れの雇用慣行を存続させてしまう。つまりデフレ脱却がキーになる。

「デフレ=物価が安い」ことには違和感を抱く人も多いだろう。ニュースではモノの値段が上がる話ばかりだ。だが、永濱氏が指摘するのは、給料の上昇が牽引する物価の上昇だ。給料が上がれば、モノやサービスを買う購買力が増加する。物価も自然と上昇しデフレも終焉するが、肝心の給料は長期停滞したままだ。この給料安とデフレを同時解決するには、減税や財政出動、金融緩和の維持で景気を刺激することだ。

 日本病は自然現象でも宿命でもない。日本人の意思で解決可能な問題である。

新潮社 週刊新潮
2022年6月30日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加