これからの社会に必要なのは「わからない」を見つける対話

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こども哲学ハンドブック 自由に考え、自由に話す場のつくり方

『こども哲学ハンドブック 自由に考え、自由に話す場のつくり方』

著者
特定非営利活動法人 こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ [著]
出版社
アルパカ
ジャンル
社会科学/教育
ISBN
9784910024004
発売日
2019/08/28
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

これからの社会に必要なのは「わからない」を見つける対話

[レビュアー] 倉本さおり(書評家、ライター)

「哲学」というと、なにやら専門知識の必要な分野をイメージするかもしれない。だが近年、世界各国で導入されている「こども哲学」が重きを置いているのは“知識”の習得ではなく“探求”の部分。簡単には答えがでないことについて、あくまで対話を通じて考えを深めていく活動を指す。そのためには、子どもたちが自由に考え、自由に話し合うための“場の設定”がまずは重要になってくる。

 そんな中、熱い支持を受けているのが『こども哲学ハンドブック』(現在三刷)だ。2019年の発売以来、教育関係者のみならず多方面から注目を集め、着実に版を重ねている。アクティブ・ラーニングといった言葉を持ち出さずとも、議論を通じて能動的に考えることの大切さについては万人が認めるところだろう。「ところが、肝心のやり方や進め方がわからない、という人がとても多かった」と担当編集者は語る。

「どうにかしてそのメソッドをわかりやすく体系化できないだろうかと、著者が開催する養成講座の内容をベースにして試行錯誤を重ねた結果、本書のような姿になりました」(同)

 ページをめくると、事前準備から当日の進め方、ファシリテーター(進行役)の心構えまで、「こども哲学」の実践に必要な事柄が、図表やイラストを交えてふんだんな具体例と共に整理されている。あくまで“実用”を想定した頼もしいつくりだ。中でも刮目すべき項目のひとつが「『わからない』を見つける7つの質問」だ。

「こども哲学では、相手を説得することよりも、自分や誰かの“わからない”を見つけることや、新しい視点を提示することのほうが重要なんです。対話を閉じることなく深めていくための質問の例を解説したページですが、本書のエッセンスが詰まっている部分でもありますね」(同)

 そもそも日本では、これまで“対話の場”が十分に確保されてこなかったという経緯がある。「こども哲学の目的は、異なる背景を持った人たちが異なったまま、一緒に生きていく力を身につけることだと思っています」(同)――今この社会に最も必要なものだろう。

新潮社 週刊新潮
2022年6月30日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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