『琉球 OKINAWA』
書籍情報:openBD
「琉球OKINAWA」小松健一著(本の泉社)
[レビュアー] 堀川惠子(ノンフィクション作家)
神々の宿る自然、祈りを捧(ささ)げる人々、豊(ほう)饒(じょう)な芸能。一族が集う祭には、この世とあの世が同居する。ヤマトの写真家は沖縄の地を踏み、一冊の作品を結実させるのに40年の歳月をかけた。
前半は琉球の海や山、市場など日々の暮らしが極彩色で活写され、独自の文化に彩られた島の佇(たたず)まいに魅せられる。一転、後半はモノクロームの世界に。米軍基地前のデモ、戦闘車両の轍(わだち)が刻まれる干潟、怒りと悲しみを無言でのみ込む人々の眼(まな)差(ざ)し。基地問題に翻弄(ほんろう)され続ける島の姿は、観光地としても消費される美しき「琉球」とパラレルワールド。まばゆい光と深い影の織りなす世界は言葉よりも雄弁だ。
ことし沖縄返還、本土復帰から50年。何がどこまで返還され、何が復帰したのか。そんな根源的な問いを、深い皺(しわ)の刻みこまれた島人(しまんちゅ)の相貌(そうぼう)は投げかけてくる。終戦の日まであと二月(ふたつき)。沖縄慰霊の日、ヒロシマ・ナガサキそして各地の空襲と、77年前に思いを馳(は)せる夏が巡ってくる。