『女子大で和歌をよむ うたを自由によむ方法』木村朗子著(青土社)

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女子大で和歌をよむ

『女子大で和歌をよむ』

著者
木村朗子 [著]
出版社
青土社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784791774548
発売日
2022/02/28
価格
2,640円(税込)

書籍情報:openBD

『女子大で和歌をよむ うたを自由によむ方法』木村朗子著(青土社)

[レビュアー] 梅内美華子(歌人)

古典と現代 つなぐ講義

 古典和歌と短歌。五七五七七の形式は同じでも詠まれている内容や言葉は相違がある。古語と現代語、身分制度や習俗や暮らしの時代差。いくつも挙げられるが果たして全く異なるといえるだろうか、と考えることがある。和歌と短歌は切れているのか、つながっているのか。それにヒントをくれる大学の現場がある。

 本書は津田塾大学で平安文学を講じる木村朗子さんの講義を元に構成された。現代の感覚や疑問を添えて明解に解説した『女子大で『源氏物語』を読む 古典を自由に読む方法』(2016年)の続編になる。今回は『源氏物語』などの和歌にスポットをあてて読みすすめるというもの。現代の読者は話の筋を追いがちになるが、著者は歌がなくては成立しないミュージカルに置き換え、歌こそハイライトシーンであると存在意義を語る。和歌には登場人物たちの心の声と言葉の技が凝縮されているのだ。

 和歌の入り口をやわらかくするために講義は現代短歌の紹介から始まる。現代の口語や名詞が入った歌で学生の関心を引くとともに、伝統詩形をゆるやかにつなげていく。例えば、歌人飯田有(あり)子(こ)の作「女子だけが集められた日パラシュート部隊のように膝を抱えて」では「性教育の時間」「体育座りの姿」と省略されたところを想像し補って読む。続いて須磨に下った光源氏の安否を妻の紫の上が心配する歌や、浮気をなじる歌の解説へ。講義後に学生たちは短歌を提出する。「女子歌」というお題では「本当にジェントルマンかは月一の生理痛の日に明らかになる」「ふとたまに壊したくなる性別という名の概念猫になりたい」など圧縮度がすばらしい歌が見られる。古典と現代の自由な往還によって生まれたものだ。この回だけでも女性が抱えてきたものが浮かび上がってくる。

 学生時代に出会いたかった、とうらやましくなる講義だ。ここに未来に続く日本文学の頼もしく、楽しい場がある。

読売新聞
2022年6月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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