『ブラックアウト (原題)BLACKOUT』キャンディス・オーウェンズ著(方丈社)

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ブラックアウト アメリカ黒人による、”民主党の新たな奴隷農場”からの独立宣言

『ブラックアウト アメリカ黒人による、”民主党の新たな奴隷農場”からの独立宣言』

著者
キャンディス・オーウェンズ [著]/我那覇真子 [訳]/ジェイソン・モーガン [訳]
出版社
方丈社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784908925931
発売日
2022/04/20
価格
2,530円(税込)

書籍情報:openBD

『ブラックアウト (原題)BLACKOUT』キャンディス・オーウェンズ著(方丈社)

[レビュアー] 森本あんり(神学者・東京女子大学長)

黒人のトランプ支持 なぜ

 私は本書の内容を支持しない。ドナルド・トランプが大統領にふさわしいとも思わないし、気候変動がグローバル族の作り話だとも思わない。だが、なぜ黒人たちがリベラルを嫌い、民主党が支持を失い、トランプが歓迎されるのかを知りたければ、本書を読むべきである。

 「ブラックアウト」の題名は、普通なら「停電」という意味だが、本書では黒人にリベラルメディアという偽りの灯からの脱出を呼びかける言葉になっている。

 著者によると、アメリカの黒人が直面している問題は、人種差別ではなく家庭の父親不在であり、それを奨励する大きな政府であり、自立と勤勉さを阻害する福祉制度である。

 2016年にトランプが勝利すると、リベラルは投票に行かなかった黒人たちをなじった。ジョンソン政権以来、黒人を便利な無言の票田としか見ていなかったからである。リベラルが黒人を自律的な能力主体とみなさなかったため、格差は増大し、失敗を社会や差別のせいにする安易な被害者意識だけが積み上がった。

 著者は昨今のBLM運動にも手厳しい。黒人が警察官に殺されるより、警察官が黒人に射殺される方がよほど多く、シカゴでは殺人事件の7割が黒人同士によるものという。#MeToo運動も、男らしさや夫への依存を蔑(さげす)むリベラルな白人女性のもので、家族と信仰と教会を大切にする黒人の友にはならない。

 今日、父親不在で育つ黒人は75%に上るが、この数字は家族がバラバラに売られた奴隷制時代よりも悪い。政府も、父親のいない家庭だけに貧困給付金を配る。かくて国家予算最大項目の福祉は、父親の役割を期待されない無責任男性を生産し続ける。これが黒人「再奴隷化」の仕組みである、と著者は解説する。

 こんな主張をするのは目立ちたがり屋の例外だ、と言うのは容易である。だが、現在の比率で黒人票が共和党に流れ続ければ、今秋の中間選挙だけでなく、次の大統領選挙も民主党に勝ち目はない。その帰結を、全世界の人々が否応(いやおう)なく受け取ることになるのである。我那覇真子訳。

読売新聞
2022年6月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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