『ゴッホを考えるヒント』
- 著者
- 佐藤公一 [著]
- 出版社
- アーツアンドクラフツ
- ジャンル
- 芸術・生活/絵画・彫刻
- ISBN
- 9784908028694
- 発売日
- 2022/02/24
- 価格
- 1,200円(税込)
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<東北の本棚>書簡から人生読み解く
[レビュアー] 河北新報
ゴッホを日本人に広く知らしめた、文芸評論家小林秀雄の「ゴッホの手紙」にならい、手紙をヒントに不世出の画家の人生と芸術を読み解く。大仙市の文芸評論家が分かりやすく解説した入門書だ。
地方の名士というべき牧師の家庭に生まれたゴッホだが、仕事もないのに、妊娠した娼婦(しょうふ)に同情して父親代わりを務めようとする。父を敬愛して炭鉱で伝道に携わるが、労働者と寝起きを共にし、服装に構わなかったため解雇される。挫折の末に残ったのが、絵を描くことだった。
世間の「常識」の壁にぶつかるゴッホにとって人間関係の形成は難題だった。著者は自画像の多さを「肖像画のモデルとの関係がつくれないことの反映」と解釈する。それを裏付けるように、ゴーギャンとの共同生活の破綻を巡り、「とりわけぼく自身に嫌気がさしたんだと思う」と手紙の中で胸中を明かしている。
絵画について話し合える画商の弟テオは心の親友で、テオとの手紙は命綱だった。「いずれにしても肝心なことは、お互い一心同体だという気持ちをしっかり持つことだ」
著者はゴッホを絵画と手紙(文学)の「リアル二刀流」と称賛する。孤独と創造への意思が読み取れる書簡に、確かに文学を感じる。(会)
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アーツアンドクラフツ03(6272)5207=1200円。