便利なはずのメールやチャットに時間と集中力を奪われないために

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超没入 メールやチャットに邪魔されない、働き方の正解

『超没入 メールやチャットに邪魔されない、働き方の正解』

著者
カル・ニューポート [著]/池田 真紀子 [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784152101365
発売日
2022/05/24
価格
2,090円(税込)

書籍情報:openBD

便利なはずのメールやチャットに時間と集中力を奪われないために

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 毎週木曜を来客日として、来る人拒まず千客万来だったのは夏目漱石。社交の機会を限定して仕事に集中する時間を確保したのではないかと。

 一方ワタシの場合、困っているのは来客より来信。便利で簡単、(一見)タダだからと誰もが気軽にメールやらチャットやらで連絡をくれますが、受け取る側はさぁ大変。まめな返信は時間がかかるし、原稿を書いてるときの着信で気は散るしで、いろいろ手は打つものの決定打はない。

 なんて愚痴っていたら知り合いのIT屋さんが薦めてくれたのが『超没入』。「二〇一九年時点で、平均的な労働者は一日に一二六通のメールを送受信しており、これはおよそ四分ごとに一通を処理している計算になる」との調査結果が引用されてて、そりゃシリコンバレーあたりの話だろと思ったら、さにあらず。件のIT屋さんだって、管理職としてのみならず、勉強会の世話役や子供の学校のPTA役員、マンションの管理組合の理事、出身校の同窓会の委員、その他いろいろとして四方八方からあれこれ送りつけられ、その数3桁に達しない日が珍しいそうな。

 そういうアナタも、2桁着信でヒーヒー泣いてるワタシも、困りごとと解決策の実例、その基礎になる理論や理屈が山盛りのこの本を読むと、あら、すっきり。すぐ始められる手軽なツールは実はまださほどないとも教えられるのだけれど、利器だったはずのメールやチャットが今や生産性の敵と見なされ、対策があちこちで始まっていると知るだけでも、まず脳味噌の凝りが癒やされる。

 集中すべき仕事に全力を注ぐ「スプリント」の思想と手法を案内してもらえるのがまたありがたいし、ピーター・ドラッカーから最近の研究者までが手掛けた“働き方の合理化”探究の成果が次から次へと紹介されているゆえ、この分野の読書案内としても便利です。

 後は漱石の智慧をデジタルで活かすテクノロジーの登場を待つばかり。

新潮社 週刊新潮
2022年7月7日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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