『「大英博物館所蔵 未発表版下絵 葛飾北斎 万物絵本大全(ばんもつえほんだいぜん)」』ティモシー・クラーク著(朝日新聞出版)

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葛飾北斎 万物絵本大全

『葛飾北斎 万物絵本大全』

著者
ティモシー・クラーク [著]/樋口一貴 [監修]/長井裕子 [訳]/村瀬可奈 [訳]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
芸術・生活/芸術総記
ISBN
9784022587138
発売日
2022/04/25
価格
4,378円(税込)

書籍情報:openBD

『「大英博物館所蔵 未発表版下絵 葛飾北斎 万物絵本大全(ばんもつえほんだいぜん)」』ティモシー・クラーク著(朝日新聞出版)

[レビュアー] 中島隆博(哲学者・東京大教授)

 江戸には絵入百科事典として、中国の影響を受けて編纂(へんさん)された中村●(てき)斎(さい)『訓蒙図彙(きんもうずい)』とそれに類する諸本があった。葛飾北斎の『万物絵本大全』がそれらと異なるのは、インドと中国の画題を、伝統的な百科事典の項目に追加し、世界を俯瞰(ふかん)するビジュアル大百科事典を構想したことにある。

 この『万物絵本大全』は大英博物館所蔵であるが、フランス国立図書館所蔵の「北斎艸稿(そうこう)集」の下絵と、ボストン美術館所蔵の版下絵と密接な関連があるとされる。特に後者は、『万物絵本大全』とは別のものではなく一つの企画を構成していたとまで考えられている。

 しかも『万物絵本大全』の年紀を見ると、文政一二年(一八二九年)九月とある。これが正しいとすれば、北斎の長い画業のなかで「空白」と考えられてきた期間を埋めるものである。その意味では、『万物絵本大全』は北斎の画業にとって二重に重要なものなのだ。長い時を超えて北斎の想像力に触れえた幸福を味わいたい。樋口一貴監訳、長井裕子・村瀬可奈訳。

●はりっしんべんに易

読売新聞
2022年7月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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