『シェール革命 (原題)The Frackers』グレゴリー・ザッカーマン著(楽工社)

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

シェール革命   ──夢想家と呼ばれた企業家たちは いかにして地政学的変化を引き起こしたか

『シェール革命 ──夢想家と呼ばれた企業家たちは いかにして地政学的変化を引き起こしたか』

著者
グレゴリー・ザッカーマン [著]
出版社
楽工社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784903063935
発売日
2022/04/12
価格
2,970円(税込)

書籍情報:openBD

『シェール革命 (原題)The Frackers』グレゴリー・ザッカーマン著(楽工社)

[レビュアー] 佐藤義雄(住友生命保険特別顧問)

一獲千金 野心家の奮闘

 セオドア・ルーズベルトの「名声は、実際に競技場に立ち、血と汗と泥にまみれる者に訪れる」という言葉を体現した人々の挫折と成功の歴史を本書は綴(つづ)っている。描かれるのはシェールオイル・シェールガスの開発と事業化に取り組み、いわゆるシェール革命で大きな役割を果たしたアメリカの経営者や技術者の人物像と彼らの事業に賭けた思いや奮闘の数々だ。

 地中深いシェール(頁岩(けつがん))層から効率的に原油や天然ガスを取り出す画期的な採掘法である「水圧破砕法(フラッキング)」や「水平掘削」の技術開発により、試行錯誤しながらも採掘量を飛躍的に増大させていく苦難の歴史。経営者というより山師といった方がぴったりくる登場人物たちの一獲千金への執念と苦悩や焦燥、そしてこうと決めたら躊躇(ちゅうちょ)なく土地や設備に大金を投じる豪胆さ。またアメリカ国内のガス需要増加による輸入依存度の上昇を見込み、輸入基地建設に多額の投資を行うも、シェール革命によりアメリカがガスの大生産国になると見るや、倒産寸前から輸出基地建設に事業転換を図る人物の決断の凄(すご)み。これらが生き生きとした筆致で描かれ、思わず引き込まれる一冊である。

 シェール革命はアメリカのみならず世界の政治経済や地政学に大きなインパクトを与えた。シェールオイル・ガス採掘は環境への影響やコストの高さという問題点もあり、一時言われたようなバラ色のものではない。しかし、最近のエネルギー価格の急上昇により再び開発が始まるという観測もある。今後もシェールオイル・ガスの動向に大きな注目が集まるのは間違いなく、そのような意味で一読の価値があるだろう。だが本書の真価は、シェール革命を起こしたのは国家やメジャーと呼ばれる大資本ではなく、山師と呼ばれるような野心に満ちた無名の企業家たちであり、彼らを産んだのはアメリカのダイナミズムであったということを描いたことにある。山田美明訳。

読売新聞
2022年7月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加