「わかる〜」は禁句。信頼関係をつくる話の聞き方

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なぜ、あの人には何でも話してしまうのか 心理カウンセラーのすごい「聞く技術」

『なぜ、あの人には何でも話してしまうのか 心理カウンセラーのすごい「聞く技術」』

著者
山根洋士 [著]
出版社
アスコム
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784776212133
発売日
2022/06/29
価格
1,595円(税込)

書籍情報:openBD

「わかる〜」は禁句。信頼関係をつくる話の聞き方

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「不思議とみんなが話をしてしまえる人」がいます。

口下手なのに、お客さんからどんどんニーズを引き出せる営業とか、飲み会や面談が苦手な部下からも本音を話してもらえる上司とか、誰からも相談を受ける先輩などなど。

なぜ、あの人には何でも話してしまうのか 心理カウンセラーのすごい「聞く技術」』(山根洋士 著、 アスコム)の著者は、そういう人には、以下のような共通する聞き方の秘訣があるのだと指摘しています。

受容・共感・自己一致。

[受容]=相手の価値観や考え方を無条件に受け入れること

[共感]=相手の感情を想像して理解すること

[自己一致]=自分が自分のあるがままでいること。そして相手が「自分はこれでいい」と思えるようになること

(4ページより)

これはアメリカの心理学者カール・ロジャーズが提唱した「傾聴の3原則」に基づくもの。カウンセリングでは相手の心を開き、信頼関係を築くために不可欠なプロセスなのだそうです。

巧みな話術を身につけるより、少し聞き方を変えるほうがはるかに効果があり、しかも「聞く努力」は誰にでもできるはず。そこで「どう話すか」ではなく、「どう話してもらうか」を意識すればいいわけです。

そんな考え方に基づく本書の第3章「安心して話してもらえる信頼関係をつくる聞き方」のなかから、「話し手との絶妙な距離感をつくる」に注目してみましょう。

安心して話してもらえる信頼関係をつくる聞き方

会話において、話し手と聞き手の距離感はとても大切。ちなみにここでいう距離とは、心の距離のことです。つまり相手が心を開いてくれるところまで近寄らないと話してもらえないし、かといって相手の心に踏み込みすぎると、逆に心を閉ざして話してもらえなくなってしまうわけです。

「上手な聞き手になろう」と意識すると、それが「相手のことをもっと理解したい」という思いにつながるため、より近づきたくなるもの。けれども上手な聞き手は、近づきすぎず、離れすぎもしない、「ほどよい距離感」を保つことを心がけているものなのだそうです。(106ページより)

「わかる〜」はわかってない

問「どうしたんですか? 元気ないですね」

話「ええ、ペットが病気になっちゃって本当につらいです。こんなに落ち込むとは思いませんでした」

問「ああ、わかります、わかります」

話「もしも元気にならなかったら……とか考えてしまって」

問「わかりますよ。私も昔、飼っていたインコが……」

(109ページより)

この会話は、とくにおかしなところはなさそうにも思えます。しかし、もしかしたら「ちょっと嫌だな」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

「わかるよ」は、相手に寄り添うつもりでつい口に出してしまいがちなことばですが、それは禁句だと著者はいいます。なぜなら、わかるわけがないから。

相手は心のなかで、「そんな簡単にわかってほしくない」「私のなにがわかるのか」と思ってしまうかもしれないのです。しかも、「私も昔…」と自分の話を始めてしまうのはさらによくないこと。「話を聞いていない人」「自分の話をしたがる人」という印象を持たれてしまうからです。(109ページより)

人にはそれぞれ「言葉マップ」がある

相手の話と似たような体験を自分もしたことがあると、「本当にわかる」と感じるかもしれません。しかしそれは個人的な感覚にほかならず、「知識や経験の罠」なのだそう。簡単な話で、性格には「わかる」というよりも「想像がつく」というレベルにすぎないからです。

ここで質問です。

あなたは、「ペット」という言葉を聞いたら、どんなことが頭に浮かんできますか? 自分で飼っている犬や猫の姿でしょうか。それとも、ペットと遊んだ思い出?

あるいは、ペットを題材にした映画や漫画が思いつくかもしれません。

(111ページより)

ひとつのことばから連想されるイメージは人それぞれ。相手の頭に浮かんでいることと、自分の頭に浮かんでいることは異なって当然なのです。

どんなに親しい間柄であったとしても、あるいは同じ環境で生活している人同士でも、完全に一致することはまずないもの。なにしろ年齢も性別も、生まれたところや育ったところも、好きなことや嫌いなこともすべて同じという人はいないのですから、そう考えるほうが自然だということです。

私たちの頭の中には、生まれてからの経験をもとに、膨大な言葉と、それに連なるイメージが蓄積されています。それを「言葉マップ」といいます。

そして会話のときは、相手の言葉を、その言葉マップからピックアップしてイメージしています。つまり、相手の言葉を自分なりに翻訳して理解しているということです。(112ページより)

なのに「わかります」と安易に共感したのでは、反感を買っても仕方ありません。言葉マップがそれぞれ異なるにも関わらず、相手が話していることを100%理解できていると思ってしまうのが、そもそもの間違いだということ。(110ページより)

相手のことを「わかっているつもり」にならない

なかでも、わかっているつもりの会話で問題が起きやすいのが親しい関係。つきあいが長くなればなるほど、「相手のことを知っている」と思い込んでしまうからです。そのため、ときには「話さなくてもわかるから」とばかりに会話を遮ってしまうこともあるもの。

したがって大切なのは、ひと呼吸置いて考えてみること。たとえば自分の大切な人(恋人や子どもなど)の好きなことと嫌いなこと、したいこととしたくないことを100%言い当てることができるでしょうか? 現実問題として考えると、それは難しいことではないかと思います。

つまり、人は自分で思っているほど相手のことを正確に理解していないのです。そこで聞き手は、「相手のことを100%理解できない」ということをわかったうえで聞くことを大前提とすべきなのです。少なくとも、わざわざ「わかる」ということばを使ってリスクを冒す必要はないわけです。(113ページより)

「話を聞ける」ことは、間違いなく強力な武器になると著者は強調しています。ビジネスもマネジメントもプライベートな人づきあいも、たったそれだけでうまくいくのだと。だからこそ本書を参考にしながら、少しだけ意識を変えてみてはいかがでしょうか?

Source: アスコム

メディアジーン lifehacker
2022年6月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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