集中タイムにあえて席を立つ。「めんどくさい」気持ちを消し、仕事効率をあげるテクニック

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「めんどくさい」が消える脳の使い方

『「めんどくさい」が消える脳の使い方』

著者
菅原洋平 [著]
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN
9784799328576
発売日
2022/06/24
価格
1,650円(税込)

集中タイムにあえて席を立つ。「めんどくさい」気持ちを消し、仕事効率をあげるテクニック

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

私たちの日常には「めんどくさい」ことがあふれています。そして、「めんどくさい」という気持ちを乗り越えるのは、たやすいことではありません。そんな「めんどくさい」という強敵と対峙するには、科学的な戦略が必要です。(「はじめに」より)

作業療法士である『「めんどくさい」が消える脳の使い方』(菅原洋平 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、このように述べています。ちなみに作業療法士の仕事とは、人間が行うあらゆる作業をうまくやるための戦略を立てること。その人の脳や体に合わせて立てた戦略を、その人の脳が自ら実行できるようにしていくのだそうです。

注目すべきは、私たちが日常的に行うあらゆる「作業」は、私たちの脳と体が行うことであり、その使い方に明確な戦略が立てられれば改善することができると断言している点。

つまり、「めんどくさい」は消せるわけであり、本書ではそのための戦略を紹介しているのです。

脳には、通じにくい命令と通じやすい命令があり、「めんどくさい」と感じるのは、自分の脳に通じにくい命令をしているのが原因なのです。

今までうまくいかなかったのは、脳に通じない命令を出していただけ。性格や生い立ち、学歴ややる気は、関係ありません。これからやることは、脳に通じる命令に変えるだけです。(「はじめに」より)

こうした考え方に基づく本書の第3章「仕事の『めんどくさい』」の中から、いくつかをピックアップしてみたいと思います。

「10秒歩き」で集中力を鍛える

作業を始めると、代謝率を上げるアドレナリンが上昇します。作業中に疲労してくると、ノルアドレナリンが上昇し、低下していく集中をなんとか維持しようとします。

ここで声をかけられると、応答するために代謝率を上げなければならなくなり負担がかかります。この負担はグリア細胞の炎症反応によるもので、この炎症を抑えるために、コルチゾールというホルモンが上昇します。このコルチゾールが増えたタイミングで、私たちは「めんどくさい」と感じます。(109ページより)

原因は声をかけられたこと自体ではなく、その前にノルアドレナリンが上昇した状態がつくられたこと。そこで著者は、普段から作業を細かく区切って席を立ってみることを勧めています。ノルアドレナリンが上昇する場面をつくらなければ、声をかけられても「めんどくさい」と感じなくなるためです。

具体的には、集中が途切れやすい人は、作業が乗ってきたところで自ら席を立ち、10秒歩いて席に戻るといいのだとか。なぜなら、そうすることで、集中力を鍛えることができるから。

そんなことをしたら、やっていたことを忘れてしまいそうですが、心配する必要はないようです。自ら作業を区切る場合は、いったん脳内に作業内容がストックされるというのです。

席を立って歩くと、ストックされた情報と脳内にある情報が照合されることになります。そのため席に戻ったときには、すんなり作業を続けることが可能。それどころか、違った角度からその作業を眺め、さらに質を高めることもできるわけです。(108ページより)

デスクワークの集中力を高める最適な姿勢

雑音の中でも集中して作業をしたいときには、脳の情報マスキング能力を高めましょう。マスキング能力は、作業姿勢を整えると高まります。

パソコンやスマホを前にしたら、まずその姿勢からまっすぐ前を見ましょう。両耳を貫くように横軸があるつもりで、頭だけを少し下げて画面を見ましょう。次に両足の裏を地面につけましょう。そして、お尻をぐっとしめて骨盤を固定しましょう。(112ページより)

この姿勢で作業すると、話を聞き流せたり、無駄な仕事に注意が奪われるのを防げたりするのだそうです。

スポーツや楽器演奏と同じく、デジタル作業にも最適なフォームがあるもの。最適なフォームがつくられると、筋肉から感覚データが上頭頂小葉に集まるのだそうです。「最適な姿勢がつくられています」という情報が、背外側前頭前野、前部帯状回皮質に送られ、目の前の作業以外の情報には注意が向かないように制御されるわけです。(112ページより)

朝、頭を上げる時間をそろえる

リモートワークの日は、出社日と同じ時間に目を覚まして一旦座ってしまい、座ったまま二度寝をしてみましょう。座って二度寝をしたほうが、その後、スムーズに行動できます。

起床を準備するホルモン・コルチゾールは、普段起床する3時間前から増え始めて、1時間前に急激に上昇します。これは、重力に対抗して頭を上げられるように血圧を高める作用があります。

つまり、同じ時間に頭を上げるようにしさえすれば、コルチゾールのリズムがずれることを防げます。(118ページより)

起床時間をずらすと、コルチゾール分泌のタイミングがずれ、日中にもコルチゾールが上昇するようになるそう。そのため、「めんどくさい」と感じやすい脳がつくられてしまうわけです。

なお、起床時間の差が3時間以上になると、メンタルの不調をきたしやすいのだといいます。起床時間のずれで、グリア細胞の炎症反応が増加すること、コルチゾールが増えすぎることが原因だと考えられているようです。

コルチゾールをキャッチする受容体は、記憶を司る海馬にたくさん存在していますが、海馬にコルチゾールが集まりすぎると、海馬の神経細胞が死滅してしまうことがあります。

起床時間の差が大きくなると、物忘れやうっかりミスを引き起こすリスクが高まるので、注意してください。(118ページより)

午前中の仕事のパフォーマンスを上げるためにも、これは記憶にとどめておいたほうがいいことかもしれません。(118ページより)

仕事にも生活にもデジタル化・オンライン化が定着した現代においては、「めんどくさい」と感じることが多くなったかもしれません。それは、自らの脳と体を使って「作業」することが減っているため、脳に通じる命令が使いにくくなっているから。だからこそ本書を通じ、自分の脳や身体が行っている「作業」をあらためて捉えなおしてみてはいかがでしょうか?

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

メディアジーン lifehacker
2022年7月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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