昭和56年に刊行された中世商業史の入門書を、文庫で再刊。頭上に載せた薪を京の都で売り歩く行商人の大原女(おはらめ)や小田原で戦国時代から続く薬種商の外郎(ういろう)氏、堺の豪商ら中世商人の多彩な姿を紹介している。東京・日本橋の問屋や縁日の市、門前町の商店などの源流をさかのぼると、中世社会にたどりつくという。
文庫版の解説には、約40年を経て文庫化された背景に類書が乏しい状況があると記されている。行商や縁日の市は廃れつつあるが、原著刊行時は今ほど珍しくなかった。収録された商人の絵図がどこか懐かしい。(ちくま学芸文庫・1210円)
-
2022年7月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです