『美しい国へ』を読み返す前に

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検証 安倍政権 保守とリアリズムの政治

『検証 安倍政権 保守とリアリズムの政治』

著者
アジア・パシフィック・イニシアティブ [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784166613465
発売日
2022/01/20
価格
1,265円(税込)

書籍情報:openBD

『美しい国へ』を読み返す前に

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 砲声のような銃声が2度、轟くのを繰り返し聞くうちに頭に浮かんできたのは、今年読んだ何冊かの新書。たとえば白井聡の『長期腐敗体制』、山崎雅弘の『未完の敗戦』、川上高志の『検証 政治改革』は安倍的ガバナンスや安倍的レジームへの評価(中傷ではなく)として、たとえば長谷川榮一の『首相官邸の2800日』は官邸インサイダーによる政権の記録として。

 そして何よりいま読み返したいのは、1月刊の『検証 安倍政権』。編纂したアジア・パシフィック・イニシアティブは、コロナ対策や民主党政権、東電原発事故についても報告書を出してきたシンクタンクです。

 この本のベースは、故人に始まり岸田や菅、石破や甘利、官僚や民間ブレーンに至る総勢54人の当事者への聞き取りで、一方、アベノミクスに選挙・世論対策、外交・安保、歴史問題、憲法改正といったテーマ別の執筆者は政治学の研究者たち。

 党派性は極薄で、信奉者からもアンチからも大歓迎はされないとして、それ以外の大多数にとっては安倍政治の蓋棺録として現状、ベストの一冊でしょう。

 あの死を間に挟んでなお、敵味方に割れての低レベルな潰し合いを続けるのなら今回の暗殺、2・26や5・15と同類の7・8事件へと化けかねない。それが嫌なら、頭を冷やして爪を隠す。ミギヒダリだけじゃなくウシロマエも見る。まずはTVを消し、この報告書を開いて、長かった安倍期を振り返り、もっと長い未来に思いを馳せましょう。

新潮社 週刊新潮
2022年7月21日風待月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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