『報道記録 東京2020 オリンピック・パラリンピック』読売新聞取材班編(読売新聞社)

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報道記録 東京2020オリンピック・パラリンピック

『報道記録 東京2020オリンピック・パラリンピック』

著者
読売新聞取材班 [編集]
出版社
読売新聞東京本社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784643220070
発売日
2022/05/31
価格
2,750円(税込)

書籍情報:openBD

『報道記録 東京2020 オリンピック・パラリンピック』読売新聞取材班編(読売新聞社)

[レビュアー] 西成活裕(数理物理学者・東京大教授)

 東京2020大会とは何だったのだろうか。この経験は将来にどう生かせるのか。近代オリンピック史上、その開催を延期し、そして無観客にしたことは一度も無かった。この未曽有の大会について、招致活動から閉会までの16年間、7万本以上の新聞記事を整理した貴重な記録が本書である。特に刻々と変化するパンデミックの状況下で、開催直前まで何度も計画が変更され続けた様子は、報道記録を読むだけでも当時の緊迫感が蘇(よみがえ)ってくる。

 実は私もその渦中にいて、組織委員会にて混雑緩和のためのアドバイザーを務めていた。開催まで2週間と迫ったところで無観客が決定した時は、あまりの衝撃でその場で崩れ落ちたのを覚えている。観客数を絞れば有観客での開催も可能であったが、机上の計画を現場で間違いなく実行するのは次元の違う難しさがあった。結果として無観客により運営側の大きな負荷軽減と様々なリスク回避が可能となった。どのような経緯でこの前例の無い判断をしたのかなど、歴史の貴重な瞬間を記録した本書は、今後長きにわたって価値ある資料となるだろう。

読売新聞
2022年7月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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