大富豪で鉄鋼王アンドリュー・カーネギーを大成功に導いた「仕事の智恵」

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大富豪で鉄鋼王アンドリュー・カーネギーを大成功に導いた「仕事の智恵」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

カーネギーという名を目にしたとき、すぐに思い出すのは自己啓発書で有名なデール・カーネギーではないでしょうか? しかし、『超訳 アンドリュー・カーネギー 大富豪の知恵 エッセンシャル版』(アンドリュー・カーネギー 著、佐藤けんいち 訳、ディスカヴァークラシック文庫)におけるカーネギーは別人の、「鉄鋼王アンドリュー・カーネギー」。

アンドリュー・カーネギーは、20世紀初頭の当時は世界最大の大富豪であった。現在価値で約3000億ドルの資産を築き上げたのである。現代にいたるまで、同時代に生きたジョン・D・ロックフェラーについで、米国史上2位をキープしつづけている。

ちなみに2022年時点でのトップは、テスラとスペースXの創業経営者イーロン・マスクである。

アンドリュー・カーネギーは、「南北戦争」後に急拡大した19世紀後半の米国資本主義の黄金期に君臨したオーナー経営者であった。(「はじめに なぜいまアンドリュー・カーネギーか」より)

スコットランドに生まれたアンドリュー・カーネギーは、幼いころに貧しい移民一家の一員として米国に移住。学歴はなかったものの独力でチャンスをつかみ、世界最大の大金持ちになったのでした。にもかかわらず、「金持ちのまま死ぬのは、恥ずべきことだ」という名言を残し、全財産の9割以上を自選活動に使い切った偉人でもあるそう。

そればかりか、「慈善事業家」としてのマニフェストというべき『富の福音』(1889年)や、没後に遺稿を編集して出版された『自伝』(1920年)に代表される著作の数々は、どれもいまなお傾聴に値するものばかり。『超訳』シリーズのひとつとして取り上げられたことには、そうした理由があるわけです。

きょうは「仕事」について触れたI「大富豪の仕事の智恵」の中から、いくつかをピックアップしてみたいと思います。

成功と失敗をわけるもの

ある目標の達成に失敗したとしても、目標そのものに問題があるわけではないのだとアンドリュー・カーネギーは主張しています。それを目指していた本人自身に問題があるというのです。

仮に2人の若者がいたとしよう。1人は、川を飛び越えようとしてジャンプしたが、流れの真ん中に落ちて流されてしまった。もう1人は、ジャンプして無事に対岸に着地することができた。この2人の違いはなにか、よくよく精査してみることだ。(3ページより)

失敗した若者に欠けていたのは、思慮分別。チャンスはつかんだのに、目的のための手段を計算に入れず、前もって訓練していなかったから失敗したというわけです。

一方、成功した若者は注意深く訓練していたはず。自分がどれだけ跳べるか知っていたからこそ、川幅を正確に測ったうえでトライしたのです。つまりそれは、思慮分別があったということ。『実業の帝国』(3ページより)

幼少期の手伝いから実業家への道が始まった

放課後には、自分の両親がやっている店のお使いで、走り回らなければならなかった。だが、いまこれを書いている現在から振り返ってみれば、10歳という小さな頃から両親の役に立っていたことに満足を感じている。(8ページより)

それから間もなく、店と取引のある人たちの口座管理を任されるようになったのだとか。つまり規模としては小さいものの、子どものころからビジネス関連のことがらに精通することができるようになったということ。

日本に目を向けてみても、やはり子どものころから親の手伝いをしていた渋沢栄一は、14歳から藍の買い入れを任されていました。また松下幸之助は、父親が相場で失敗して破産したため尋常小学校を退学し、9歳から丁稚奉公に出ています。そうした手伝いは、決して無駄なものではないということなのでしょう。『自伝』(8ページより)

高い地位の人に認められることが出世のステップ

高い地位にある人と個人的に知り合いになって認められることは、人生においてとても重要なこと。とりわけ若い人にとって、それは重要なことであるようです。

どんな若者でも、自分の仕事の事業範囲を超えて、なにか大きなもの、なにか上司の目を引くようなことを目指すべきなのだ。『自伝』(15ページより)

そのためには、視野を広く持つことも大切かもしれません。(15ページより)

成功を阻む「3つの危険」

ビジネスの世界で成功したい若者に対し、アンドリュー・カーネギーはまず「志を高く持て」といいたいと述べています。そして、事業分野を絞り込んで精通することも重要だと。ただし、それだけでは十分ではないようです。

もちろん成功要因は、人によっても場所によっても大きな違いがあるもの。しかし、長年にわたって実際に見てきた限り、ビジネスの世界で失敗する要因はほぼ共通しているというのです。

まずは、食事の際は別にして、アルコールは絶対に飲まないこと。

つぎに、投機は絶対にしないこと。投機と投資は別物だ。

そして最後に、絶対に裏書きをして保証人にならないこと。

(20ページより)

必ず守るべきは、この3つだというのです。『実業の帝国』(20ページより)

成功したければ専門に特化する

いくら高額の報酬でも、給与所得者を続けていたのでは富をつくることはできない。「卵を全部1つの籠にいれて、割れないように注意深く見守る」ことが必要だ。

コーヒーの商人なら、コーヒーに専念せよ。砂糖の商人なら、砂糖に専念して、コーヒーのことは放っておけ。2つを一緒にするのは、コーヒーに砂糖を入れて飲むときだけだ。(8ページより)

つまり大切なのは、1つの事業だけに完璧に精通することであり、有能な人はそれしかしないのだそうです。細分化し、専門化することこそが時代に求められるものだといいますが、これはそのまま現代にもあてはまることではないでしょうか。『実業の帝国』(34ページより)

まずは、関心のあるところから読みはじめればOK。そして気が向いたら、他の項目にも目を向けてみればいいわけです。そうすれば、アンドリュー・カーネギーという多面的な人物の全体像がおぼろげながら見えてくるかもしれません。

Source: ディスカヴァークラシック文庫

メディアジーン lifehacker
2022年7月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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