織守きょうや×浅倉秋成、大注目のミステリ作家特別対談。「ほぼ」同期の2人が、デビュー後の苦労から互いの最新作までを語り尽くす!

対談・鼎談

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学園の魔王様と村人Aの事件簿

『学園の魔王様と村人Aの事件簿』

著者
織守きょうや [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041113905
発売日
2022/06/29
価格
1,815円(税込)

書籍情報:openBD

織守きょうや×浅倉秋成、大注目のミステリ作家特別対談。「ほぼ」同期の2人が、デビュー後の苦労から互いの最新作までを語り尽くす!

[文] カドブン

構成・文/吉田大助 写真/鈴木慶子

■2人が小説を書く理由は、世界平和のため!?『学園の魔王様と村人Aの事件簿』&『俺ではない炎上』刊行記念。
織守きょうやと浅倉秋成、10年越しの対談が実現!

6月に刊行した『学園の魔王様と村人Aの事件簿』が、探偵と助手の関係性にキュンとする!と評判を集めている織守きょうやさん。そして、逃亡炎上ミステリー『俺ではない炎上』が『六人の噓つきな大学生』に続いて大ヒット中の浅倉秋成さん。
実は同門でほぼ同期という2人が、デビューの思い出から互いの最新作までを語りました。10年来の付き合いだからこそ出てくる、貴重なエピソード満載の対談をお届けします。

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織守きょうや×浅倉秋成、大注目のミステリ作家特別対談。「ほぼ」同期の2人が…

■よーいドンで走り出したタイミングは
ほぼ同時だったのに……

――初めての著書を刊行した日付は、織守さんが2013年1月で、浅倉さんは2012年12月。しかも、ともに「講談社BOX新人賞Powers」受賞者です。同門かつ、ほぼ同期なんですよね。

浅倉:デビュー後に苦労した時期があったのも一緒です(笑)。でも、織守さんは『記憶屋』でもう1回賞を取られて(第22回日本ホラー小説大賞読者賞受賞)、一気にブレイクして。僕にとって織守さんはずうっと、仰ぎ見る存在だったんですよ。ようやく最近、織守さんの隣に座ってもまぁいいかなって人になれました。

織守:本音を言うと、「浅倉さんがようやく表に出てきてくれた」という気持ちは私もあります。結構時間がかかったぞ、と(笑)。だって浅倉さんのデビュー作の選評とあらすじを見た時、「この人は売れる!」と思いましたもん。

浅倉:「編集者全員一致で大賞を受賞」とか「伏線の狙撃手、爆誕!」とか、押し出していただいたんですよね。けど、売れなかったですねぇ(苦笑)。

織守:でも、私はっていうか講談社BOXでデビューした仲間はみんな、「浅倉さんはいつか絶対出てくる」と思っていました。ずっと見守っていたんです。

浅倉:デビューして何年後かにようやくTwitterを始めて、そのDM経由で連絡をいただけるようになって。講談社BOXからデビューしたみなさんの集まりに、途中からお邪魔させていただくようになったんですよね。それがきっかけで腐らずにいられたところはあるんですよ。

織守:浅倉さんが『教室が、ひとりになるまで』(2019年3月刊)で一気に注目を浴びた時は、「やっと来た!」となりましたよ。これは浅倉さんの時代が来るなと思っていたら、『六人の噓つきな大学生』(2021年3月刊)で大ブレイクして、ほらね、と。

浅倉:30歳までに売れなかったら、もう止めようと思っていたんです。『教室が、ひとりになるまで』を出したのが29歳なんですよ。もうこれが売れなかったら就職しよう、と。その時考えた「売れる」の基準は3つあって、重版が掛かるか、ミステリランキングに入るか、新たに他社から声がかかるか。

織守:全部クリアじゃないですか。

浅倉:ホントにもう、ありがたいことに。でも、よーいドンで走り出したタイミングはほぼ同時だったのに、どんどん前を走っていく織守さんの存在は、「自分もやんなきゃ、頑張らなきゃ」っていう発憤材料でもありました。今日は、さも同格みたいな雰囲気で、背中を合わせて写真を撮れるようになれて嬉しかったです(笑)。

織守:私、今回の対談の話をいただいた時に、「浅倉さん、売れっ子で忙しいから断られたらどうしよう」って思いましたよ?

浅倉:いやいやいや!!

■リアリティはあるけれども無駄な雑味がない
ストレスなくただひたすら楽しむことができる

――織守さんは『学園の魔王様と村人Aの事件簿』、浅倉さんは『俺ではない炎上』と、おふたりはほぼ同時期に新刊を出されました。浅倉さんの新刊の話は、版元の文芸総合サイト「COLORFUL」でたっぷりしていただくとして……こちらでは織守さんの新刊の話を。『学園の魔王様と村人Aの事件簿』は織守作品では珍しい、高校1年生を主人公にしたど真ん中の青春ミステリーです。優等生かつちょっとダーティな噂もあり「魔王」と呼ばれ恐れられている御崎秀一は、名探偵並みの推理力の持ち主だった。そのことを知ったミステリー好きの同級生・山岸巧が助手役を買って出て、2人で学校や町で起こる事件の解決に挑みます。

浅倉:織守さんの作品っていつも、柔和な入り口を用意してくれているんですよね。今回もバティもので推理ものって聞くと、「あっ、あの感じね」と思ってすんなり暖簾をくぐれる。そうやって入っていくと今回も……なんて言えばいいのかな、ちゃんと景色が変わる瞬間があるんです。

織守:「景色が変わる瞬間がある」って、いい言い方ですね! この作品の紹介の仕方に、自分でも悩んでいたんですよ。明日から使おう(笑)。

浅倉:男の子2人の関係性がいいですよね。織守さんの書く、優しい男の子がいいんですよ。男の子を書くのって難しくて、あんまりいい子過ぎても「現実にいるか、この子?」ってなるし、性欲とかが微妙に入ってくると途端に気持ち悪くなるんだけど、リアルな存在ではあって欲しい。その塩梅が絶妙で、自然と好きになっているんですよね。特に今回は、御崎の魔王感にキュンときました。

織守:男性の作家さんに「キュンとした」と言ってもらえたのは、嬉しいです。

浅倉:いやいや、キュンとしますよ。「抱かれてもいい」はちょっとあれですけども、「キスされてもいい」というか、もしも「キスしたい」と言われたら、受け身じゃなくて前のめりに「いいんですか!?」みたいな。
一同 (笑)

織守:私としては今回、探偵と助手の関係性にフォーカスしたんです。2人の掛け合いも意識して増やしましたし、自分たちの関係性について考える描写も結構入れています。まずその関係性を書きたいという思いがあって、それを成立させるために謎を考えたというか、ミステリー的に味付けしたつもりだったんですよね。

浅倉:めちゃめちゃミステリーでしたよ!

織守:自分でも意外と、ミステリー部分もしっかりできたかもと思っています(笑)。

浅倉:織守さんの作品はさっき言ったように、見た目は柔らかいんです。でも、iPhoneの蓋を開けたら「部品がギチギチに詰まっている!」みたいな感じで、精密にできている。例えば男の子2人の何気ない掛け合いの中に出てくるセリフも、ちゃんと意味があったりしますもんね。あとはやっぱり、司法関連の描写がいい。2、3行のちょっとした文章の中に、生々しさが匂い立つんですよ。きっと織守さんが弁護士をされていた頃の経験が生きているんじゃないかな、と。僕だったら、リアリティを出そうとして逆に書き込んじゃうと思うんです。リアリティはあるけれども無駄な雑味がないからこそ、本来楽しむべき部分に目一杯光が当たる。この2人の成長とか関係性の変化とか、景色が変わる瞬間を、ストレスなくただひたすら楽しむことができる。

織守:めっちゃ褒められてる! じゃあ、私からもちょっといいですか。これは『六人の噓つきな大学生』もそうだったし今回の『俺ではない炎上』もそうだったんですけど、主人公の状況が順風満帆なところから始まるんですよね。ピカピカの自尊心を胸に持っているところから始まって、不穏なことが起きて、どんどん人間不信になっていくし、主人公の嫌なところが見えてくる。こんなふうに展開していったら絶対いい終わり方をするわけがないなと思ってしまうけど、救いがあるんですよ。この話を違和感のないかたちで爽やかに終わらせられるのは、さすがだな、腕だなぁと思います。

浅倉:人に勝手なレッテルを貼ることであったり、人を記号的に理解することの愚かしさは、ここ最近、自分でもテーマにしているなぁと思っていたところなんです。それってよくよく考えてみれば、織守さんの『学園の魔王様と村人Aの事件簿』と共通する部分がありますよね。

織守:そうですね! 全然意識してなかったですけど、「それは危ういぞ」って気持ちが無意識にあるのかもしれません。その問題意識が、作品の中に出たのかもしれない。

浅倉:あの作品も、途中で結構ビターになりかけるんだけど、読後感が爽やかですよね。

織守:「小説の中ぐらい希望があってもいいじゃないか」って意識はありますね。

浅倉:僕もあります。「人を信じているんですね」とたまに言われることがあるんですけど、ぜんぜん信じちゃいないんですよ。でも、だからこそ、小説の中では何かしらの希望を書きたい。世の中にはしょうもなさもあるけれども、しょうもなさをもう一回見せる作業に徹するつもりはないですね。

織守:よく分かります。人を信じていないからこそ、「こう生きて欲しいな」とか「こうあって欲しいな」という世の中に対する思いが、小説の中に出てくる。

浅倉:社会貢献、みたいな感覚はありますよね。自分の本が存在したことによって、世の中がほんんんんんの少しでも良くなればいいなと、本気で思っている。これからも世界平和のために、お互い頑張りましょう!

織守:なんだかすごい結論になっちゃった(笑)。でも、うん。頑張りましょう。

織守きょうや×浅倉秋成、大注目のミステリ作家特別対談。「ほぼ」同期の2人が...
織守きょうや×浅倉秋成、大注目のミステリ作家特別対談。「ほぼ」同期の2人が…

『俺ではない炎上』を深掘りした2人の対談はこちら!
https://colorful.futabanet.jp/articles/-/1505

■プロフィール

織守きょうや×浅倉秋成、大注目のミステリ作家特別対談。「ほぼ」同期の2人が...
織守きょうや×浅倉秋成、大注目のミステリ作家特別対談。「ほぼ」同期の2人が…

織守きょうや(おりがみ きょうや)
1980年イギリス・ロンドン生まれ。2013年、第14回講談社BOX新人賞Powersを受賞した『霊感検定』でデビュー。15年、第22回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞した『記憶屋』は、シリーズ累計35万部を超えるベストセラーとなる。その他の著作に『黒野葉月は鳥籠で眠らない』『世界の終わりと始まりの不完全な処遇』『ただし、無音に限り』『響野怪談』『花束は毒』などがある。

『学園の魔王様と村人Aの事件簿』(KADOKAWA)定価1,815円(税込)

織守きょうや×浅倉秋成、大注目のミステリ作家特別対談。「ほぼ」同期の2人が...
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『学園の魔王様と村人Aの事件簿』刊行記念! 織守きょうやインタビュー
https://kadobun.jp/feature/readings/akdmm68zxxs8.html

『学園の魔王様と村人Aの事件簿』紹介漫画 
https://kadobun.jp/feature/readings/1kc30gjmeu00.html

撮影/ホンゴユウジ
撮影/ホンゴユウジ

浅倉秋成(あさくら あきなり)
1989年生まれ。関東在住。2012年、第13回講談社BOX新人賞Powersを受賞した『ノワール・レヴナント』でデビュー。2019年に刊行した『教室が、ひとりになるまで』が第20回本格ミステリ大賞と、第73回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門にWノミネート。21年刊行の『六人の噓つきな大学生』は、4つの主要年間ミステリ・ランキングすべてにランクインし、第12回山田風太郎賞候補、2022年本屋大賞にノミネート、「ブランチBOOK大賞2021」大賞(『王様のブランチ』TBS系毎週土曜あさ9時30分より生放送)を受賞。その他の著書に『フラッガーの方程式』『失恋の準備をお願いします』『九度目の十八歳を迎えた君と』など。現在、集英社「ジャンプSQ.」にて、原作をつとめる「ショーハショーテン!」(漫画:小畑健)を連載中。

『俺ではない炎上』(双葉社)定価1,815円(税込)
https://www.futabasha.co.jp/introduction/2022/oredehanai_enjo/index.html 

『六人の噓つきな大学生』特設サイト
https://kadobun.jp/special/asakura-akinari/rokunin

KADOKAWA カドブン
2022年07月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

KADOKAWA

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