『喜怒哀楽のお経を読む』釈徹宗著
[レビュアー] 産経新聞社
僧侶・宗教学者の著者が、メタローグ(架空の相手との対話)という手法を用いて、恐れ/怒り/笑い/悲哀/老・病・死―の5つのテーマから仏教の経典に分け入り、生き方のヒントを探る。
ここで浮き彫りにされるのは、仏教とは宗教というより人生に即した融通無碍(むげ)な哲学ということだ。例えば自死について、罪とする経典もあれば、大きな過失ではないといった経典もある。どちらが正しいのか。著者は、大切なのは自分で誠実に向き合うことであり、何事においてもマスターキーのようのなものはないと述べる。このしなやかな思考が何よりも魅力的だ。(朝日選書・1650円)