世界的な恐竜研究者による発掘記の文庫化。アラスカの自然保護区で巨大なクマと遭遇し、ゴビ砂漠では眼前の涸(か)れ川が濁流と化す―。手に汗握る発掘現場の描写が探検記のようだ。
「偶然と実行のみが、発見につながっている」と著者は書く。〝聖地〟の北海道で日本初の恐竜全身骨格「むかわ竜」を発掘し、学名を「カムイサウルス・ジャポニクス」と命名する経緯は、興奮と熱気が伝わってくる。海外で発掘した化石を持ち帰って研究するのではなく、その国に置いてくるという著者の研究者としての姿勢も語られる。この夏、親子で読みたい一冊。(新潮文庫・781円)
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2022年7月17日 掲載
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