『アンネ・フランクはひとりじゃなかった アムステルダムの小さな広場1933―1945』

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

『アンネ・フランクはひとりじゃなかった アムステルダムの小さな広場1933―1945』

[レビュアー] 産経新聞社

『アンネの日記』の記述は、ナチスドイツ占領下のオランダでユダヤ人迫害が激化して隠れ家生活に入った1942年に始まる。一方、アンネの両親がドイツからオランダに移住先を求めたのは33年。その間、一家はどんな環境で生きていたのか。自宅前の広場を中心に築かれた亡命ユダヤ人と現地住民たちの濃密なコミュニティーを、証言と史料で精密に再現する。

そこで見えるのは孤独に日記をつづる内向的な少女ではなく、大人を困らせるほど活発で友人も多い新鮮なアンネ像だ。だが、幸せな時期は長く続かない。激動の欧州現代史が、小さな広場から見えてくる。(リアン・フェルフーフェン著、水島治郎・佐藤弘幸訳/みすず書房・4620円)

産経新聞
2022年7月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク