日本ダメ論に終止符 希望のプラス材料とは?

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日経平均は4万円になる!

『日経平均は4万円になる!』

著者
武者 陵司 [著]
出版社
宝島社
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784299026767
発売日
2022/04/08
価格
990円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

日本ダメ論に終止符 希望のプラス材料とは?

[レビュアー] 田中秀臣(上武大学教授)

「日本はもう後進国に転落した」みたいな日本ダメ論が人気だ。だが、日本企業の価値創造はここ10年、ダイナミックにかつユニークに変貌している、と武者陵司『日経平均は4万円になる!』は指摘する。

 コロナ禍とウクライナ戦争の影響で、株価は低迷している印象が強い。だが、日経平均をみればこの12年間で4倍以上に増価し、世界でも優等なレベルだ。国際競争力を失ったかにみえた日本企業は、オンリーワンの分野で活躍している。

 株の時価総額ランキング国内上位をみると、重厚長大産業ではなく、IT企業の雄であるGAFAMの次を狙う日本企業が目白押しだ。映像・音楽・ゲームなど多様なコンテンツを創造するソニー、センサのキーエンス、高性能モーターの日本電産などがいまや日本企業の中核だ。企業が海外投資で稼ぐ所得も毎年20兆円前後で、世界でもトップ水準になる。日本がダメになった象徴だった半導体産業も、良質な半導体素材を提供できる日本の貢献が不可欠だ。コロナ禍が終われば、海外からの旅行客が戻り、それが旅行・飲食業を復活させるだろう。武者の解説を読むと、サンバを踊りたくなるような陽気な気持ちになる。日経平均が4万円に届くのもそう遠くないように思えてしまう。

 希望に満ちた本書の中で、ただ一つ不安視されるのが、岸田政権の今後の政策だ。経済は自然現象ではなく、その時の政治に左右される。日本経済のダイナミズムを失わない経済政策が重要だ。

新潮社 週刊新潮
2022年8月4日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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