「こうしたい」ニーズに応える「されたい営業」の新常識と実践トレーニング

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「こうしたい」ニーズに応える「されたい営業」の新常識と実践トレーニング

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

自分が“こうしたい”と考える営業と、お客様が“されたい”と考える営業は、果たして同じなのか?

お客様が教えてくれた「されたい」営業』(今井晶也 著、フォレスト出版)の著者は、そんな疑問を投げかけています。いま知るべきなのは、自分ではなくお客様が“されたい”と考える営業の「事実」なのだと。

ただし、それだけでは不十分でもあるようです。

お客様の“されたい営業”を知っていたとしても、好ましいコミュニケーションが取れるかどうかはまったく別の話です。

知り得た情報は、正しく理解し、繰り返しトレーニングすることであなたの血肉となるでしょう。

この本で目指してほしいのは、“知る”のその先です。(4ページより)

他社が実践する“新しい取り組み”は、とかく魅力的に映ってしまいがち。そのため、「よさそうだな」という思いから“なんとなく”真似をしてみたり、ライバル会社のマーケティングや営業の手法に感化されたりするわけです。

しかし問題は、「本当にその方法で成果が出ているのか」という点であるはず。真似することにばかり意識が向いてしまうと、お客様のことをまったく見ていないということにもなってしまいやすいからです。

そこで、本書の出番。ここで著者は、自身が確立した「シン・セールス理論」という新しい時代の営業理論を基盤としながら、さらに約100名の購買者にアンケートをとり、購買者のリアル・購買におけるファクトを収集し、現時点で通用する理論を導き出しているのです。

端的にいえば、購買者(お客様)側の「こうしてほしい」というリアルな要望にピントを合わせているということ。きょうは第1章「変わる購買、されたい営業」のなかから「現代版『されたい営業』の新常識」に焦点を当ててみたいと思います。

お客様が事前に知っておきたいこと

「他社の営業マンから商談を受ける際は、事前に話される内容の大枠や領域を知っておきたいと思いますか?」という問いに対し、78.7%の人が「事前に知っておきたい」と回答したそうです。

「どちらとも言えない」を含めると95.8%になるというので、ほぼ全員がそれを望んでいるといえそうです。つまり、ここからわかるのは、「商談前に資料を送ったほうがよい」ということ。

しかし著者が現場の営業マンとして活動していたころは、「事前に情報を与えて余計な判断をされないほうがよい」と教育されていたのだとか。事実、アポイントに約束をしていた企業に事前資料を送ったところ、「資料を見ましたが、いますぐの検討は難しそうなので、商談は見送らせてください」とキャンセルされたこともあったといいます。

もちろん、この質問の結果だけで、「資料を先に送らないほうがよい」という考え方は完全に否定されたのかというと、必ずしもそうではないかもしれません。

とはいえ、実際にはお客様にとっては、事前に情報がある状態が「されたい営業」でした。(65ページより)

この質問は、著者が執行役員を務めているセレブリックス セールスカンパニーが購買者100名を対象に行った調査でも同様の回答状況だったそう。

意見のなかには「情報があると話したいことや聞きたいことを準備して商談に臨める」といったものがあったようですが、しかし事前に送る資料にも工夫が必要なのだと著者はいいます。

情報をたくさん詰め込んでしまうと、受け取った側は情報の多さに抵抗を感じたり、商談そのものに不安を抱いてしまいがちだというのです。また資料が外部に出回りすぎると、情報統制ができなくなるというリスクも生まれます。

そうした観点を踏まえ、商談前には商談前用に加工された資料を展開することが必要だと考えます。

資料だけで完結させない、商談に臨む気持ちが前のめりになるような「ハイライト集」の資料を作るのがよいでしょう。(66ページより)

また、お客様の関心の高いところを中心に商談できるようにすることも「されたい営業」の基本であり、現代版の営業理論なのだと著者は主張しています。(64ページより)

名前を知っている企業の導入事例は必要?

「他社の営業マンから商談を受ける際、名前を知っている企業の導入事例があると安心できますか?」という問いに対しては、68.4%の方が「安心感がある」と回答したといいます。その一方、「どちらともいえない」「あまりそう思わない」「そう思わない」というネガティブな回答も3割程度あったよう。

著者はこれを、コミュニケーションスタイルを分類したときに一定数、「物事を疑ってかかったり、懐疑的に情報を受け取る」性格の人がいるからだと分析しています。

そういった方々は習慣として、「大手企業だからうまくいったのではないか?」とか、この企業が導入しているからといって、私たちとは環境も状況も全然違うよね」といった反応を示すというのです。

こうした前提を踏まえると、有名な企業の事例は活用できるのは確かだが、商談相手の企業と近しい事例や、似たようなニーズやエピソードの事例を話すことができると、その効果は格段に高まることが予想できます。(70ページより)

これもまた、意識しておきたいポイントかもしれません。(68ページより)

たとえばこのように、アンケート結果に基づく具体的な結果を軸として話が進められていきます。したがって本書を活用すれば、自分自身で「知る」→「学ぶ」→「活かす」というサイクルを築いていくことができるかもしれません。そしてそれを実現させることは、“新しい営業”への第一歩を踏み出すきっかけにもなることでしょう。

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2022年7月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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