『ドリフターズとその時代』笹山敬輔著(文春新書)

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ドリフターズとその時代

『ドリフターズとその時代』

著者
笹山 敬輔 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784166613649
発売日
2022/06/17
価格
968円(税込)

書籍情報:openBD

『ドリフターズとその時代』笹山敬輔著(文春新書)

[レビュアー] 川添愛(言語学者・作家)

爆笑舞台 演劇の視点で

 1973年生まれの私にとって、ドリフターズの笑いは物心ついたときから当たり前に存在するものだった。私の最も古いドリフの記憶は、メンバーが西遊記のキャラに扮(ふん)する中、なぜか加藤茶だけが「カトー」という実名で登場する人形劇「飛べ!孫悟空」だ。知人の通っていた小学校では、掃除の時間にヒゲダンスのテーマが流れ、生徒がいっせいに踊り出してろくに掃除にならなかったという。本書の著者の言うとおり、ドリフはまさに「国民の記憶」である。

 そんな私に本書は、演劇史という切り口から新たなドリフの見方を教えてくれた。とくに驚いたのは、メンバーと「8時だョ!全員集合」のスタッフが歌舞伎やアメリカのディズニーランドを視察し、コントや舞台美術に取り入れていたということだ。当時、歌舞伎の「か」の字も知らず、東京ディズニーランドが数年後にできることなど知るよしもなかった子供たちも、ドリフを通じてそれらに触れていたのだ。

 なぜドリフは舞台にこだわったのか? 仲本工事によれば、「ジャズ喫茶という舞台出身だから」だという。高木ブーの「やっぱりドリフは『バンド』なんだよなって思いますね」という言葉にも表れているとおり、ドリフの笑いはいかりや長介の強力なリーダーシップのもとで、グループの総合力によって生み出されるもの。私もなんとなくドリフはいわゆる“お笑い芸人”とは違うと思っていたが、理由はそこにあったのかと腑(ふ)に落ちた。

 本書の中心の一つは、いかりやと志村けんの複雑な関係性である。読みながら、83年に撮影された「ドリフ大爆笑」のオープニングで志村が気だるい雰囲気を醸し出していたことを思い出したりした。また、同時期に活躍した萩本欽一や「オレたちひょうきん族」とのライバル関係や、笑いに対するアプローチの違いも面白い。ドリフが自分の血肉となっているという自覚がある人にとっては必読の書である。

読売新聞
2022年8月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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